Q&A

国際税制

 

14.分割承継法人等である内国法人が外国法人から剰余金の配当等を受けた場合の取扱い

※T&Amaster(ロータス21)2011.5.30  No.404 に掲載

はじめに

 外国子会社合算税制により課税対象金額又は部分課税対象金額の合算課税が内国法人に生じた場合で、その内国法人に係る外国子会社がその内国法人に対して剰余金の配当等を支払うときには、その剰余金の配当等を受けるその内国法人において二重課税排除の措置を講じない限り、同一の所得に対して二重課税が生ずることとなります。本稿においては、内国法人が株式等を直接保有している外国法人が内国法人に支払う剰余金の配当等の額のうち、内国法人の所得金額に合算された金額を原資とする部分について生ずる二重課税の排除に関して概要を説明するとともに、剰余金の配当等を受領する内国法人等について適格分割等が行われた場合の留意点について検討を行うこととします。

 

 なお、内国法人が株式等を直接保有していない外国法人が海外子会社を経由して内国法人に支払うこととなる剰余金の配当等の取扱いについては、説明を省略しています。

 

1.合算課税後に外国法人から受ける剰余金の配当等の一般的な取扱い

 内国法人が外国子会社合算税制によって合算課税された外国法人から剰余金の配当等の額を受ける場合には、外国子会社配当益金不算入制度(法法23の2)の適用関係に応じて、次のⅰからⅲまでに掲げる取扱いのいずれかの適用を受けることとされています(措法66の8①~③、措令39の19①)。

 

ⅰ 外国子会社配当益金不算入制度の適用対象外の外国法人から受ける剰余金の配当等の額がある場合の益金不算入

 

ⅱ 外国法人から受ける剰余金の配当等の額で外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けるものがある場合の益金不算入

 

ⅲ 外国法人から受けるみなし配当等の額で自己株式等買取り予定のために外国子会社配当益金不算入制度の適用対象とならないものがある場合の益金不算入

 

 以下、1においては、上記ⅰについて概要を説明します。

 

 内国法人が外国法人(法人税法23条の2(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)の1項に規定する「外国子会社」に該当するものを除きます。)から受ける剰余金の配当等の額がある場合には、その剰余金の配当等の額のうちその外国法人に係る特定課税対象金額に達するまでの金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととされています(措法66の8①)(参照)。

 

【図】

 

 この特定課税対象金額とは、次のイ及びロに掲げる金額の合計額をいいます(措法66の8④)。

 

イ 配当事業年度の課税対象金額等の直接持分対応金額

ロ 前10年以内の各事業年度の課税済金額

 

 これらの内容は、次のとおりです。

 

イ 配当事業年度の課税対象金額等の直接持分対応金額

 この金額は、次の算式により計算した金額とされています(措法66の8④一、措令39の19②)。

 

 

 上記算式中の「外国法人に係る適用対象金額又は部分適用対象金額」は、内国法人が外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含む事業年度(以下、「配当事業年度」といいます。)の所得の金額の計算上益金の額に算入される課税対象金額又は部分課税対象金額に係るものに限られます(措令39の19②括弧書き)。

 

 また、上記算式の分数式の分子の「内国法人が保有する外国法人の請求権勘案直接保有株式等」とは、内国法人が保有する外国法人の株式等の数又は金額をいいますが、その外国法人が請求権(剰余金の配当等、財産の分配その他の経済的な利益の給付を請求する権利をいいます。以下、同じです。)の内容が異なる株式等を発行している場合には、次の数又は金額とされています(措令39の19②括弧書き)。

 

 

ロ 前10年以内の各事業年度の課税済金額

 この金額は、次の算式により計算した金額の合計額とされています(措法66の8④二、措令39の19③)。

 

 

 上記算式中の「外国法人の各事業年度の適用対象金額又は部分適用対象金額」は、内国法人が外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含む事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度(以下、「前10年以内の各事業年度」といいます。)の所得の金額の計算上益金の額に算入された課税対象金額又は部分課税対象金額に係るものに限られます(措令39の19③括弧書き)。

 

 また、上記算式によって計算された金額の合計額について、前10年以内の各事業年度において外国法人から受けた剰余金の配当等の額(上記ⅰからⅲまでの適用を受けた部分の金額に限ります。)がある場合には、その剰余金の配当等の額に相当する金額をその合計額から控除した残額がこの前10年以内の各事業年度の課税済金額とされます(措法66の8④二括弧書き)。

 

2.適格分割等があった場合の課税済金額の取扱い

 内国法人が適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(適格現物分配にあっては、残余財産の全部の分配を除きます。以下、「適格分割等」といいます。)により分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下、「分割法人等」といいます。)からその保有する外国法人の直接保有の株式の数又は出資の金額の全部又は一部の移転を受けた場合には、その内国法人のその適格分割等の日を含む事業年度以後の各事業年度における特定課税対象金額については、次の金額は当該内国法人の前10年以内の各事業年度の課税済金額とみなされます(措法66の8⑥)。

 

 その適格分割等に係る分割法人等の分割等前10年内事業年度(適格分割等の日を含む事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度若しくは各連結事業年度又は適格分割等の日を含む連結事業年度開始の日前10年以内に開始した各連結事業年度若しくは各事業年度をいいます。以下、同じです。)の課税済金額又は個別課税済金額のうち、次の算式により計算した金額(措令39の19⑥)

 

 

 

3.適格分割等があった場合の課税済金額の帰属する事業年度

 上記の適用がある場合には、内国法人の適格分割等の日を含む事業年度以後の各事業年度における特定課税対象金額については、課税済金額又は個別課税済金額は、分割法人等の次に掲げる事業年度又は連結事業年度の区分に応じその内国法人の次に定める事業年度の課税済金額とみなされます(措令39の19④)。

 

イ 適格分割等に係る分割法人等の分割等前10年内事業年度のうち次のロ及びハに掲げるもの以外のもの : 当該分割法人等の分割等前10年内事業年度開始の日を含む当該内国法人の各事業年度(措令39の19④三)

 

 

ロ 適格分割等に係る分割法人等のその適格分割等の日を含む事業年度又は連結事業年度開始の日が内国法人のその適格分割等の日を含む事業年度開始の日前である場合のその分割法人等の分割等前10年内事業年度 : その分割法人等の分割等前10年内事業年度終了の日を含むその内国法人の各事業年度(措令39の19④四)

 

 

 

ハ 適格分割等に係る分割法人等の分割等前10年内事業年度のうち内国法人のその適格分割等の日を含む事業年度(以下、「分割承継等事    業年度」といいます。)開始の日以後に開始したもの : その内国法人の分割承継等事業年度開始の日の前日を含む事業年度(措令39の19④五)

 

 

4.問題点の検討

 適格分割の日の属する分割承継法人の事業年度において、外国子会社から剰余金の配当等の額を受ける場合のその分割承継法人におけるその剰余金の配当等の額の課税上の取扱いについて、次の事例を用いて検討します。

 

事例】

 

・12月決算の外国法人Aは、設立第1期(設立日は×1年1月1日)において特定外国子会社等に該当し、合算課税の適用除外要件を満たさないものとします。なお、内国法人が外国法人Aから受ける剰余金の配当等の額については、租税条約の適用関係について定めた法人税法施行令22条の4(外国子会社の要件等)の5項の適用はないものとします。

 

・内国法人Bは、外国法人Aの設立以来、外国法人Aの発行済株式の総数の10%の株式を保有しており、×2年1月31日に適格分割により、その保有するすべての外国法人Aの株式を分割承継法人である内国法人Cに移転しました。内国法人B及びCは、共に3月決算とします。

 

・外国法人Aは、×2年2月28日にその日を剰余金の配当等に係る基準日として、その株主である内国法人Cに対して第1期の利益剰余金を原資として剰余金の配当等を支払いました。

 

 内国法人Bの×2年3月期については、×1年12月31日時点での外国法人Aの株主は内国法人Bであるため、外国法人Aの課税対象金額は内国法人Bの所得の金額に合算されます。

 

 次に、内国法人Cの×2年3月期の課税関係を確認します。

 

 ×2年1月31日に行われた適格分割により、内国法人Bが保有する外国法人Aの株式のすべてが内国法人Cに移転します。ここで、この株式の移転に伴い、内国法人Bにおいて合算課税されることとなる金額が、内国法人Cに帰属することとなるのか否かが問題となります。

 

 租税特別措置法施行令39条の19第4項3号によれば、適格分割に係る分割法人の分割等前10年内事業年度の課税済金額は、その分割法人の各事業年度の課税済金額とみなされますが、内国法人Bの分割等前10年内事業年度である×1年3月期以前の事業年度については、外国法人Aに係る課税済金額はありません。

 

 したがって、その適格分割により内国法人Bから内国法人Cに移転する分割等前10年内事業年度の課税済金額もないこととなります。

 

 このような状態のもと、内国法人Cは外国法人Aから剰余金の配当等を×2年2月28日に受けることとなりますが、内国法人Cにおいてその剰余金の配当等の額がどのように取り扱われるのかを検討します。

 

 内国法人Cにおける外国法人A株式の保有割合は10%であり、外国法人Aは法人税法23条の2に規定する外国子会社配当益金不算入制度の適用対象の外国法人に該当しないため、租税特別措置法66条の8第1項の規定の適用を受けることとなります。内国法人Cは、外国法人Aに係る特定課税対象金額(配当事業年度における課税対象金額等の直接持分対応金額及び前10年以内の各事業年度における課税済金額)を有していないため、外国法人Aから受ける剰余金の配当等の額の全額が内国法人Cにおいて益金の額に算入されることとなります。

 

 この結果、外国法人Aが第1期に稼得した所得については、内国法人Bにおいて外国子会社合算税制の適用により合算課税を受け、内国法人Cにおいては剰余金の配当等の額の益金不算入の取扱いを受けることができず益金算入されることとなるため、一つの所得について日本国内において内国法人Bと内国法人Cにおいて課税が生ずる、いわゆる二重課税の状態となり、永久にこの二重課税の排除が行われないこととなります。

 

 外国子会社合算税制における合算の対象となった外国法人の株式等を、通常の譲渡の方法で移転する場合に、上述のように譲渡法人の課税済金額を譲受法人の課税済金額とみなすことによる二重課税の排除が行われないことは言うまでもないわけですが、適格分割のような適格組織再編成により移転するときにおいても、その外国法人からの剰余金の配当等の額について、益金不算入の適用が受けられない状態が生ずることがあります。

 

 このため、外国子会社合算税制の適用がある外国子会社から剰余金の配当等を受け取る際には、二重課税の排除が図られるように、事前に十分なプランニングを行う必要があるものと考えます。