平成21年度改正により、外国子会社配当益金不算入制度(法法23の2)が創設されましたが、これに伴い、外国税額控除制度における国外所得金額の計算に疑問が生じています。
すなわち、国外所得金額の計算上、収入金額として益金の額となる金額は、外国子会社からの受取配当等の額の100%であるのか、あるいは、5%であるのかという疑問と、その受取配当等の額の原価の額、費用の額、損失の額として損金の額となる金額はそれらの金額の100%であるのか、あるいは、5%であるのかという疑問です。
これらの疑問点の検討を行うに当たって、まず、国外所得金額がどのような金額であるのかということを確認することとしますが、国外所得金額について定めた法人税法施行令142条(控除限度額の計算)の3項においては、国外所得金額とは、「国内源泉所得(省略)以外の所得(以下この条において「国外源泉所得」という。)に係る所得のみについて各事業年度の所得に対する法人税を課するものとした場合に課税標準となるべき当該事業年度の所得の金額(省略)に相当する金額」とされています。
仮に、外国子会社からの受取配当等のみが国外源泉所得であるとすると、上記の規定の「国外源泉所得」を「受取配当等」に置き換え、この受取配当等に係る所得のみについて各事業年度の所得に対する法人税を課するものとした場合に課税標準となるべき金額を計算することとなりますので、国外所得金額は、この受取配当等だけが益金の額であるとして各事業年度の所得の金額を計算するものとした場合のその所得の金額ということになります。すなわち、外国子会社からの受取配当等の額のみが内国法人の益金の額であるとして各事業年度の所得の金額を計算すればよいわけです。
以下、このような理解を前提に冒頭の疑問について考えてみることとします。
まず、はじめに、益金の額となる金額に関する疑問について考えてみると、内国法人が外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けるという場合には、益金の額となる金額は、法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算)の2項によるのではなく、同項の別段の定めである同法23条の2によることとなり、外国子会社からの受取配当等の額の5%となることになります。
次に、損金の額となる金額に関する疑問について考えてみると、次のとおりとなります。
外国子会社からの受取配当等に係る損金の額となる金額は、法人税法22条3項によって計算することとなりますが、同項の金額に関しては、別段の定めが設けられているわけではありませんので、同項の1号の原価の額、2号の費用の額及び3号の損失の額(以下、「原価の額等」といいます。)のそれぞれの全額の合計額となります。
すなわち、法人税法施行令142条3項の規定によって国外所得金額を計算すると、損金の額となる金額は、原価の額等の100%の金額ということになります。
ただし、法人税法施行令142条3項の規定によって国外所得金額を計算する場合に関しては、同条6項に法人税法22条3項2号の費用の額のうちの共通費用の額に関する取扱いが定められていますので、これについても、共通費用の5%を国外所得金額の計算上の損金の額となる金額とすることとならないかということを検討しておく必要があります。
法人税法施行令142条6項においては、共通費用の額は「収入金額、資産の価額、使用人の数その他の基準のうち当該内国法人の行う業務の内容及び費用の性質に照らした合理的と認められる基準」により配分を行うものとされています。この基準が外国子会社からの受取配当等の額の5%を指すこととなるのか否かが問題となるわけですが、この規定は、その文言からすれば、受取配当等の額(収入金額)の95%が益金不算入となったとしても、その解釈が変わる余地はありません。
このような点からすれば、法人税法施行令142条6項も、平成21年度改正前と同様に、原価等の額の100%を損金の額となる金額とするものとなっているということになります。
冒頭の二つの疑問に対する回答は、上記のとおりですが、外国子会社からの受取配当等の額の5%相当額が原価の額等となっている*1と仮定すれば、これらの金額を益金の額と損金の額とすることで、国外所得金額の増減は生じないこととなります。
※1 法人税法23条の2の1項においては、受取配当等の額の5%相当額は「当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額」とされています。