内国法人が特定外国子会社等から剰余金の配当等の額を受けた場合には、特定課税対象金額を限度として、その剰余金の配当等の額が益金不算入(措法66の8①・②)となりますが、この特定課税対象金額は、外国子会社合算税制(措法66の6)の適用により、剰余金の配当等の額を受ける日を含む事業年度又はその事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度において特定外国子会社等に係る課税対象金額が益金の額に算入されている場合に生ずることになります(措法66の8③)。
このため、外国子会社合算税制の適用により課税対象金額が益金の額に算入される前に特定外国子会社等の利益が内国法人に配当された場合には、特定課税対象金額はその配当を受ける事業年度後に発生するため、その剰余金の配当等の額は益金不算入の規定(措法66の8①・②)の適用を受けることができず、二重課税(外国子会社合算税制による合算課税と配当課税)が発生してしまいますが、この二重課税を爾後に解消することはできない、という点に注意する必要があります。
例えば、内国法人と特定外国子会社等がともに3月決算法人である場合に、内国法人がその特定外国子会社等から×2年11月30日に中間配当(×3年3月期の中間期の利益を原資とするもの)を受けるときは、その特定外国子会社等の×3年3月期の利益は、その特定外国子会社等の事業年度終了の日(×3年3月31日)の翌日から2月を経過する日を含むその内国法人の事業年度(×4年3月期)の益金の額に算入されることになります。つまり、中間配当の原資となった特定外国子会社等の×3年3月期の中間期の利益は、内国法人がその配当を受けた事業年度後の事業年度において外国子会社合算税制の適用を受けることとなるわけです。
この場合、×2年11月30日に中間配当の原資とされた×3年3月期の中間期の利益に係る特定課税対象金額は、×4年3月期に生ずることになり、その配当を受けた×3年3月期には生じません。
このため、外国子会社合算税制により合算課税される前に配当された×3年3月期の中間期の利益については、既往において特定課税対象金額が生じていなければ、特定課税対象金額がないということになりますので、内国法人の×3年3月期に配当課税(特定外国子会社等が、外国子会社に該当する場合には5%相当額、外国子会社に該当しない場合には全額が課税)されるとともに、×4年3月期に外国子会社合算税制により合算課税を受けることにならざるを得ません。
(図表)
このように、内国法人が、特定外国子会社等の利益を外国子会社合算税制により合算課税される前に配当として受ける場合には、配当課税と外国子会社合算税制による合算課税との二重課税が生ずることがありますので、特定外国子会社等から配当を受ける場合には、その配当の額以上に特定課税対象金額とされたものがあるのか否かを確認しておく方が良いと考えられます。