Q&A

公益法人税制

 

3.一般社団法人の基金の取扱い


 一般社団法人は旧有限責任中間法人と同様、基金制度が設けられていますが、一般社団法人が受け入れた基金について、税務上、どのように取り扱うことになるのでしょうか。

 「基金」とは,一般社団法人(一般社団法人の成立前にあっては,設立時社員)に拠出された金銭その他の財産であって,当該一般社団法人が拠出者に対して法及び当該一般社団法人と当該拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務(金銭以外の財産については,拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)を負うものとされ(一般社団・財団法人法131ており)、その性格は、一種の外部負債であるとされています(一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A(法務省HP:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html#23)。

 

 このことから、基金を受け入れる場合には、受入時の益金の額に算入する必要はないものと考えられます。

 

(参考)
法人税基本通達逐条解説(五訂版)(平成20年6月、税務研究会、11・12頁)

(中間法人の課税所得の範囲)1-1-8 中間法人法第2条第1号《定義》に規定する中間法人は普通法人に該当することから、例えば、人格のない社団等の構成員が中間法人を設立して当該人格のない社団等の義務を当該中間法人に移転した場合であっても、その課税所得の範囲は、収益事業から生じた所得に限定されないことに留意する。

 

【解説】
 本通達においては、中間法人は普通法人に該当することから、人格のない社団等において行っていた事業を中間法人に移転した場合には、双方の課税所得の範囲が異なることが留意的に明らかにされている。

 

 平成14年4月から新しい法人制度である「中間法人制度」が施行されている。この制度は、町内会、同窓会、サークルなど、非公益かつ非営利目的の団体に法人格を取得する途を開く制度である。

 

 ところで、中間法人は、準則主義で設立され、事業活動の内容、残余財産の帰属等について法制度上の規制がないこともあって、特定非営利活動法人とは異なり、その根拠法令において「公益法人等とみなす」といった手当ては行われていない。したがって、中間法人は法人税法上「普通法人」に該当することとなり、その課税所得の範囲は、各事業年度において生じたすべての所得ということになる。

 

 この中間法人制度の創設により、従来人格のない社団等として事業活動を行っていた団体が、法人格を取得するケースが発生すると考えられる。

 

 人格のない社団等は、法人税法上、法人とみなされ、公益法人等と同様に、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得のみが課税対象とされている(法3、7)。

 

 このため、人格のない社団等の構成員が中間法人を設立して、従来人格のない社団等で行っていた事業を引き継いで中間法人で行うこととした場合には、以前は当該事業が収益事業に該当しないために課税対象とされていなかった収益や、また、当該団体の運営のために課していた会費や寄附金収入なども、中間法人では課税対象として課税所得の計算を行うこととなる。

 

 なお、中間法人には、有限責任中間法人と無限責任中間法人という2類型があるが、このうち、有限責任中間法人の成立に際しては、300万円以上の基金の払込みを受けることとされている(中間法人法12)。この場合の基金は、法人税法上、どのように取り扱うべきか問題となる。

 

 この点については、当該基金は、当該有限責任中間法人が拠出者に対して中間法人法及び当該有限責任中間法人と当該拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務を負うもの」とされており(中間法人法2四)、会計上「預り金」としての性格を有するものと認められることから、資本金等の額には該当しないし、また、払込時の益金の額に算入する必要もないものと考えられる。