公益社団・財団法人についての金融資産収益(利子・配当等)については、源泉所得税が非課税とされています。このように、金融資産収益について源泉所得税が非課税とされる場合であっても、収益事業に属する金融資産収益は収益事業の付随収入として法人税の課税対象になるのでしょうか。その場合、例えば、貸借対照表を区分してすべての金融資産を非収益事業に属させることによって、収益事業の付随収入とみなされないようにすることは可能でしょうか。
上記質問4-①の回答においても述べさせて頂いたとおり、「その性質上その事業に付随して行われる行為」(法令5①)に該当する行為は、収益事業に含まれることとなります。
この行為に、「公益法人等が収益事業から生じた所得を預金、有価証券等に運用する行為」が該当するとする法人税基本通達15-1-6の解釈には妥当性があると考えます。
後段の「すべての金融資産を非収益事業に属させることによって、収益事業の付随収入とみなされないようにすることは可能か」というご質問ですが、これは法令の解釈の問題ではなく、事実関係に関するご質問ですので、具体的な事実が分からない状況では、的確なご回答を差し上げることができません。
ただし、一般論として申し上げるとすれば、「すべての金融資産を非収益事業に属させること」とするということは簡単ではないのではないかと感じます。
いずれにしても、状況を詳細に確認しつつ、法人税基本通達15-1-7の解釈に関して検討を深めることが必要となると考えます。
(参考)
法人税基本通達(抄)
(付随行為)
15-1-6 令第5条第1項《収益事業の範囲》に規定する「その性質上その事業に附随して行われる行為」とは、例えば次に掲げる行為のように、通常その収益事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる行為をいう。
(1)出版業を営む公益法人等が行うその出版に係る業務に関係する講演会の開催又は当該業務に係る出版物に掲載する広告の引受け
(2)技芸教授業を営む公益法人等が行うその技芸の教授に係る教科書その他これに類する教材の販売及びバザーの開催
(注)教科書その他これに類する教材以外の出版物その他の物品の販売に係る収益事業の判定については、15-1-10に定めるところによる。
(3)旅館業又は料理店業を営む公益法人等がその旅館等において行う会議等のための席貸し
(4)興行業を行う公益法人等が放送会社に対しその興行に係る催し物の放送をすることを許諾する行為
(5)公益法人等が収益事業から生じた所得を預金、有価証券等に運用する行為
(6)公益法人等が収益事業に属する固定資産等を処分する行為
(収益事業の所得の運用)
15-1-7 公益法人等が、収益事業から生じた所得を預金、有価証券等に運用する場合においても、当該預金、有価証券等のうち当該収益事業の運営のために通常必要と認められる金額に見合うもの以外のものにつき収益事業以外の事業に属する資産として区分経理をしたときは、その区分経理に係る資産を運用する行為は、15-1-6にかかわらず、収益事業に付随して行われる行為に含めないことができる。
(注) この場合、公益法人等(人格のない社団等並びに非営利型法人及び規則第22条の5各号に掲げる法人を除く。)のその区分経理をした金額については、法第37条第5項《公益法人等のみなし寄附金》の規定の適用がある。
(所得に関する経理)
15-2-1 令第6条《収益事業を行う法人の経理区分》の「所得に関する経理」とは、単に収益及び費用に関する経理だけでなく、資産及び負債に関する経理を含むことに留意する。(昭56年直法2-16「八」により改正)
(注)一の資産が収益事業の用と収益事業以外の事業の用とに共用されている場合(それぞれの事業ごとに専用されている部分が明らかな場合を除く。)には、当該資産については、収益事業に属する資産としての区分経理はしないで、その償却費その他当該資産について生ずる費用の額のうち収益事業に係る部分の金額を当該収益事業に係る費用として経理することになる。