Q&A

公益法人

 

6.公益財団法人の会費の取扱い

※T&Amaster(ロータス21)2013.04.15  No.495に掲載

 当社は、従来から、特例民法法人である財団法人の法人会員となっていますが、この度、この財団法人は、公益認定を受けて公益財団法人となります。


 この財団法人の会員のうち、法人については、「法人会員」又は「法人会友」となることができますが、それぞれの年会費は10万円と1万円となっています。「法人会員」は、月1回の懇談会や研究会に無料で参加をすることができる等の特典があり、「法人会友」は、月刊誌が送られてくるだけとなっています。財団法人に確認を行ったところ、公益認定を受けた後もこれらの点は変わらないとのことですが、公益認定を受けた後にはこれらの会費の70%以上を「公益目的事業」とされる事業に使用するとのことです。


 内閣府のホームページにおいては、「財団法人の賛助会費」の取扱いに関する質問に対する回答の中で「公益財団法人の会員が払う会費は、公益社団法人の社員が社員たる資格に伴って定款で定めるところにより支払ういわゆる会費(一般社団・財団法人法第27条)とは性格が異なり、認定法上は基本的には寄附金に該当するものと考えられます。」(FAQ6-1-①)とされています。


 このため、当社が支払う「法人会員」の会費の税法上の処理は、従来、「会費」として損金の額に算入していましたが、財団法人が公益認定を受けた後には、「寄附金」として損金算入限度額の範囲内の金額のみを損金の額に算入する、ということになるのではないかという疑問が生じています。


 この当社が支払う公益財団法人の「法人会員」の会費が税法上どのような取扱いとなるのか、ご教授をお願い致します。

 

要 旨

【マエストロの解説】

 

 貴社が公益財団法人に支払う「法人会員」の会費は、いわゆる通常会費と考えられるが、「法人会員」となることによって懇談会や研究会に無料で参加できるというような便益を受けることからすると、対価性があるものと認められるため、法人税法上、「寄附金」には該当せず、従来どおり、「会費」としてその全額が損金の額となるものと考えられる。


 また、消費税に関しても、貴社が公益財団法人に支払う「法人会員」の会費は、従来どおり、不課税取引となるものと考えられる。


 なお、本稿は、貴社が標準的な「法人会員」であって懇談会や研究会に無料で参加できるというような便益を受けているものと想定して私見を述べるものであり、例えば会費を支払ってはいるが便益を受けることが殆どないなど、個別の事情を考慮するべき場合には、その公益財団法人の会員となっているという事情は同じであったとしても、本稿の解説とは異なる取扱いとなることがあることに留意されたい。

 

 

1 問題点の確認

 公益法人法制が創設されたことに伴い、平成20年度税制改正において、公益法人税制の改正が行われたが、この改正においては、公益法人等に関する税制の改正とともに、公益法人等に寄附を行った者に関する税制の改正も行われて、公益法人等に対する寄附が行い易くなった。


 この公益法人等に対する寄附を行った者の寄附金に係る税法上の取扱いは、かなりの程度、周知されているため、特に疑問が生ずることはないものと考えられる。


 しかし、「会費」の性格は多様であるため、従来から「会費」に係る税法上の取扱いのうち、特に「寄附金」との区分に関しては、あまり明確に語られてこなかったように見受けられる。


 貴社の場合には、会費の支出先の法人が「財団法人」であった時にはその会費の全額が「会費」として損金の額(法法22②)となっていたものの、その会費の支出先が「公益財団法人」となってその会費の70%以上が公益目的事業に使用される(注)ということになればその会費が「寄附金」(法法37⑦)となって損金算入限度額内の金額だけしか損金の額とならない、ということになるのかという疑問が生じているわけであるが、公益認定に伴って同様の疑問が生ずることも少なくないと考えられる。


(注)本件においては、従来、財団法人が行っていた事業の一部に会費収入の70%以上が,
  使用されていたが、その事業が公益認定に際して「公益目的事業」となっているため、
  公益財団法人の会費の70%以上が「公益目的事業」とされる事業に使用されるという
  状態になっており、事業自体の実態は公益認定の前後で変わらない、という前提で解
  説を行っている。


 この問題は、税法上の「会費」と「寄附金」の区分の問題であり、法人税法における「会費」の損金算入及び「寄附金」の損金不算入における取扱いだけでなく、パブリックサポートテストにおける寄附者の数や寄附金の額の計算、更には、消費税法上の「課税取引」か「不課税取引」かという判定とも関係するものである。


 なお、公益法人の認定を受けた場合には、寄附だけでなく会員を募る活動も従来以上に活発に行われて、公益法人の公益目的事業の趣旨に賛同して会員となるというケースも増えているとのことであり、そのような状況は我が国の社会に公益活動を根付かせるという観点からすれば大いに歓迎するべきものであるが、会費の税法上の取扱いに関して法令等による特別な措置が講じられていない状況下においては、税法上、会費が寄附金に該当するのか否かということは、あくまでも現行の税法の規定の趣旨及び解釈に従って正しく判断する必要がある、ということをまず初めに確認しておくこととする。

 

 

2 法人税法上の「会費」と「寄附金」の区分

(1)「会費」

 「会費」に関しては、法人税法上、その全額が損金の額となるため、特に「別段の定め」(法法22②)は設けられておらず、その定義が必ずしも明確ではない。


 法人税基本通達第9章第7節第3款においては、「会費及び入会金等の費用」と題して、「会費」の取扱いに関するいくつかの国税庁の解釈が示されている。


 これらの通達の中で本件の参考となるものは、次の「同業団体等の会費」に関するものである。


「9-7-15の3 法人がその所属する協会、連盟その他の同業団体等(以下9-7-15の3
  において「同業団体等」という。)に対して支出した会費の取扱いについては、次に
  よる。


  (1) 通常会費(同業団体等がその構成員のために行う広報活動、調査研究、研修指導、
   福利厚生その他同業団体としての通常の業務運営のために経常的に要する費用の分
   担額として支出する会費をいう。以下9-7-15の3において同じ。)については、
   その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入する。ただし、当該同業団体
   等においてその受け入れた通常会費につき不相当に多額の剰余金が生じていると認
   められる場合には、当該剰余金が生じた時以後に支出する通常会費については、当
   該剰余金の額が適正な額になるまでは、前払費用として損金の額に算入しないもの
   とする。


  (2) その他の会費(同業団体等が次に掲げるような目的のために支出する費用の分担
   額として支出する会費をいう。以下9-7-15の3において同じ。)については、前
   払費用とし、当該同業団体等がこれらの支出をした日にその費途に応じて当該法人
   がその支出をしたものとする。


   イ 会館その他特別な施設の取得又は改良


   ロ 会員相互の共済


   ハ 会員相互又は業界の関係先等との懇親等


   ニ 政治献金その他の寄附


   (注)1・2省略」

 


 上記の通達においては、「通常の業務運営のために経常的に要する費用の分担額として支出する会費」を「通常会費」と呼んで基本的にその全額を損金の額とし、「通常会費」以外の会費をその同業者団体等の費途に応じて繰延資産、福利厚生費、交際費、寄附金として処理する、としている。


 上記の通達の取扱いは、同業団体等はその構成員のために「広報活動、調査研究、研修指導、福利厚生その他」の業務を行うものであり、その構成員はそのような業務の便益を受けている、という理解の下に、「通常会費」を損金の額とする、としているものである。 すなわち、「通常会費」には「対価性」があるという理解に基づき、「通常会費」を損金の額とする、としているわけである。


 そして、「通常会費」以外の会費に関しては、その実質的な内容を見て、その実質的な内容に基づいて、繰延資産、福利厚生費、交際費、寄附金として処理する、という考え方が採られているわけである。


 法人税法において、法人が支出する費用等がどのような種類の費用であるのかということを判定するに当たっては、基本的には、その費用等として支出する金銭等の支出先がその金銭等をどのように使用するのかということを考慮する必要はない。


 しかし、同業者団体等に支出する会費に関しては、一様に「会費」とされてはいても、その実質的な内容がさまざまに異なる可能性があるため、それぞれの実質に応じた取扱いとするべく、上記のような通達が設けられているわけである。


 ところで、同業者団体等は、通常、「社団」となっており、「財団」とはなっていない、と考えられるため、上記の通達も、「社団」を前提とした取扱いと解するべきものと考えられる。


 このため、「財団」である本件に上記の通達の取扱いをそのまま当てはめることができるのかという疑問が生じてくることがあり得ると考えられる。


 この点に関しては、会費の支払先が「財団」となっていれば上記の通達の取扱いが変わるということにはならない、ということに留意する必要がある。


 上記の通達の取扱いは、法人が支払う会費の実質的な内容を見てその実質的な内容に即して法人税法上の取扱いを決めるというものであって、会費を支払う法人にとってその会費がどのような内容のものとなっているのかということが問題となるわけであり、会費の支払先が「社団」か「財団」かということによって法人税法上のその会費の取扱いが変わるといったことはない。


 法人税法上は、あくまでも、同じ行為は同じように取り扱う、ということになる。

 

 

(2)「寄附金」

 「寄附金」に関しては、法人税法37条(寄附金の損金不算入)において、損金の額となる金額を損金算入限度額以下の金額に限ることとされており、定義を含めて定めが設けられている。


 法人税法37条7項においては、「寄附金の額」について次のように規定されている。

 


「7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をも
  つてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償
  の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費
  及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における
  当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な
  利益のその供与の時における価額によるものとする。」

 


 この「寄附金の額」に関しては、法人税基本通達第9章第4節において「寄附金」と題して多くの項目に関して解釈が示されているが、特に本件の検討に当たって具体的に言及すべきものは見当たらない。


 ただし、これらの解釈は、「対価性」のない支出を「寄附金」と捉えるという点では共通しており、この点は、本件においても重要である。

 

 

(3)「会費」と「寄附金」の区分の例

 法人税法における「会費」と「寄附金」のそれぞれの定義は上記(1)及び(2)のとおりであるが、「会費」と「寄附金」の区分に関して国税庁の取扱いを述べたものとしては、次の二つが存在する。

 

 

① 認定NPO法人制度におけるパブリックサポートテストにおける取扱い

 認定NPO法人制度におけるパブリックサポートテストを行う場面は、法人の費用等の種類を判定する場面ではないが、法人税法において「会費」と「寄附金」をどのように捉えているのかということを次の国税庁のQ&Aからうかがい知ることができる。

 


 「(問18)パブリックサポートテスト(PST)の判定に当たって、会費を寄附金として取
    り扱うことはできるのでしょうか。


  (答)「寄附金」とは、支出する側に任意性があり、直接の反対給付がない経済的利益の
    供与と考えられます。一方、「会費」とは、サービス利用の対価又は会員たる地位に
    あるものが会を成り立たせるために負担すべきものであって、寄附金と異なり対価性
    を有するものと考えられます。


     したがって、会員から受領する「会費」については、一般的には、パブリックサポ
    ートテスト(PST)の判定上、寄附金の額として取り扱うことはできません。


     しかしながら、会費という名目であっても、定款や規約等から実質的に判断して、
    明らかに贈与と認められる会費(すなわち対価性が認められない会費(注)。いわゆ
    る「賛助会費」がこれに該当する場合が多いと思われます。)については、その名称
    にかかわらず、パブリックサポートテスト(PST)の判定上、寄附金として取り扱
    って差し支えないこととしております。


     なお、絶対値基準においても同様に、定款や規約等から実質的に判断して、明らか
    に贈与と認められる会費については、その名称にかかわらず、パブリックサポートテ
    スト(PST)の判定上、寄附金として取り扱って差し支えないこととしております
    。


  (注)対価性の有無の判断に当たっては、例えば、不特定多数の者に対して無償で配布さ
     れる機関誌等を会員が受け取っている程度であれば、対価性がないものとして取り
     扱われます。」

 


 ここでは、「会費」と「寄附金」は「対価性」の有無によって区分するという基本的な考え方に立った上で、「賛助会費」などの「対価性が認められない会費」は「寄附金として取り扱って差し支えない」としている。


 そして、この「対価性が認められない会費」に関しては、注記により、「例えば、不特定多数の者に対して無償で配布される機関紙等を会員が受け取っている程度」であれば、これに該当する、とされている。この例示を反対解釈すれば、有償で販売される機関紙等を会員が受け取っている場合には、その会費は、対価性が認められる会費となって「寄附金」とはならない、ということになる。


 ただし、この認定NPO法人制度におけるパブリックサポートテストに関しては、NPO法人自体が広く市民から支援を受けているのかどうかを判断するために行うものであり、NPO法人には、その各会員が会費を支払う事情はよく分からないため、受け取る会費が寄附金に該当するのか否かは、その自らの「定款や規約等」から判断する他ない、という点に留意する必要がある。


 会費を受け取る側からすると、その会費が寄附金に該当するのか否かということは、「定款や規約等」から判断する他ないわけであり、そのような事情にあるため、上記の国税庁のQ&Aにおいては、「定款や規約等から実質的に判断して、明らかに贈与と認められる会費」であるのか否かによって寄附金に該当するのか否かを判断するとしているわけであり、本件においても、このような事情は同様である。


 このことは、会費を受け取る側がその会費を「寄附金」であると判断してそのように認識したとしても、会員においてその会費が対価性のある支払いであるという場合にはその会費は寄附金には該当しないという関係となることがあり、また、それとは反対の関係となることもある、ということを意味している。

 

 

② 政党等寄附金特別控除制度における取扱い


 法人税ではなく、所得税に関する取扱いということになるが、政党等寄附金特別控除制度における「会費」と「寄附金」の区分の基準に関する次の国税庁のQ&Aも、本件の参考となるものと考えられる。

 


「Q2


  政党の党費や後援会の会費は、政党等寄附金特別控除の対象になりますか。


 A2


  政党の党費や後援会の会費は、継続的、定期的に納入する金銭であり、一定の規約等に
 基づいた債務の履行として支払うものであることから、寄附金には当たりません。


  したがって、政党の党費や後援会の会費は政党等寄附金特別控除の対象にはなりません
 。」

 


 所得税における法令の解釈や取扱いをそのまま法人税に当てはめることができるとは限らないが、この「会費」と「寄附金」の区分の考え方は、上記①における「支出する側に任意性があり、直接の反対給付がない経済的利益の供与」を「寄附金」とし「会員たる地位にあるものが会を成り立たせるために負担すべきものであって、寄附金と異なり対価性を有するもの」を「会費」とする考え方と基本的には同様と考えられる。


 政治家等の後援会も、上記2(1)で述べた同業者団体等と同じく、「財団」ではなく「社団」となっているものと考えられるため、本件の検討に当たって上記の取扱いをそのまま用いることには慎重でなければならないが、受け取る側ではなく支出する側の事情によってその支出する側のその支出を「会費」とするのかあるいは「寄附金」とするのかということが決まるということは、はっきりと確認しておく必要がある。

 

 

3 内閣府の見解

 貴社の指摘のとおり、内閣府からは、次のようなQ&Aが公表されている。

 


 「問Ⅵ‐1‐①(公益目的事業財産)

   財団法人で賛助会費を集めていますが、その会費収入の扱いは、社団法人の社員が
  支払う会費と同様に、目的を定めていなければ半分が公益目的事業財産になるという
  理解でいいのでしょうか。

 

 答


 1 公益財団法人の会員が払う会費は、公益社団法人の社員が社員たる資格に伴って定
  款で定めるところにより支払ういわゆる会費(一般社団・財団法人法第27 条)とは性
  格が異なり、認定法上は基本的には寄附金に該当するものと考えられます。


 2 したがって賛助会費を徴収するに当たり、目的を定めなければ全額が公益目的事業財
  産になりますが(公益法人認定法第18 条第1号)、一定割合を管理費に充てるなど公
  益目的事業以外への使途を明らかにすれば、その定めた割合にしたがいます。」

 


 上記の答の「1」においては、貴社の指摘のとおり、公益財団法人の会員が払う会費に関して、特に「賛助会費」等に限ることなく、「基本的には寄附金に該当する」と述べている。


 しかし、これは、「認定法上」の判断であって、税法上の判断を示したものではないことに留意する必要がある。


 ところで、内閣府からは、次のとおり、公益法人に係る税法上の取扱い(公益法人のパブリックサポートテストに関する取扱い)に関する解説も示されている。

 


「<「3,000円以上」の要件について>


  ある方からの1度の寄附金額が3,000円に満たない場合であっても、同一の者からの寄
 附金額の合計が同一事業年度において計3,000円以上であれば、寄附者1人としてカウン
 トすることができます。


  以下の点に注意して下さい。


 ①・② 省略


 ③ 公益財団法人の賛助会費、公益社団法人の法人法上の社員以外の者から支出された
  会費(特別会費)等は、当該会費に対価性や支出義務がない場合には寄附金として認
  められると考えます。(現行制度における所得税法§78②Ⅲの所得控除、法人税法
  §37④の寄附金の損金算入の対象となる寄附金の考え方と同様です。)」(「税額控除
  に係る証明~申請の手引き~」4頁)

 


 上記③においては、「賛助会費」や「特別会費」等は「対価性や支出義務がない場合」には「寄附金」として認められ、この考え方は「現行制度における所得税法§78②Ⅲの所得控除、法人税法§37④の寄附金の損金算入の対象となる寄附金の考え方と同様」と述べられている。


 ここで引用されている「法人税法§37④」は、次のとおりである。

 


「4 第1項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人
  等(省略)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文
  化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定
  めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(前項各号に規
  定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(省
  略)は、第1項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が
  支出した寄附金の額については、この限りでない。」

 


 上記のとおり、法人税法37条4項は、特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入に関する定めとなっているが、同項においては、特に「寄附金の考え方」が示されているわけではない。


 このため、上記の「税額控除に係る証明~申請の手引き~」の引用文中の「当該会費に対価性や支出義務がない場合には寄附金として認められると考えます。」という部分がなぜ「法人税法§37④の寄附金の損金算入の対象となる寄附金の考え方と同様」ということになるのかは明らかではないが、少なくとも、「賛助会費」や「特別会費」等は「対価性や支出義務がない場合」には「寄附金」となるという認識が示されていることは、間違いない。


 このような「会費」と「寄附金」の区分に関する内閣府の認識は、上記1において確認した国税庁の解釈と基本的には同様と考えられる。

 

 

4 貴社が公益財団法人に支払う「会費」の法人税法上の取扱い

 平成20年度税制改正においては、「寄附金」の概念を変更する改正は行われていないため、同改正が行われる前後で、「会費」として支出するもののその支出の理由等に変更がなければ、従来、「会費」としてその全額を損金の額としていたものが「寄附金」となって損金算入限度額の範囲内でしか損金の額とならないといったことにはならない。


 法人が支出した金銭等が「会費」としてその全額が損金の額となるのか、あるいは、「寄附金」として損金算入限度額の範囲内でしか損金の額とならないのかということは、その支出が「対価性」のある支出であるのか否かによって決まることとなる。


 このことは、即ち、その支出の相手先が「財団法人」であるのかあるいは「公益財団法人」であるのかということによって、その支出が「会費」になったり「寄附金」になったりするわけではない、ということを意味している。


 「財団法人」が公益認定を受けて「公益財団法人」となり、会員の会費が公益目的事業の収入として経理されることとなったとしても、その法人が現に行っている活動が従来と同様であるということであれば、会員が会費を支出する理由等も変わらないはずである。


 一般に、「財団法人」や「公益財団法人」などの会員となって会費を支払うという場合には、その趣旨に賛同して対価性のない金銭等を支出するということになっているケースもあると思われるが、法人や個人事業者においては、事業上の必要性があって会員となり会費を支払うというケースが多いように見受けられる(注)。

 


  (注)個人事業者に該当しない個人の場合には、事業上の必要性があって会員となると
   いう事情になく、公益法人の公益目的事業に賛同して会員となるというケースが多
   いと聞くところであり、法人や個人事業者の場合とはかなり事情が異なる可能性が
   ある。

 


 貴社の場合にも、貴社の現在の「財団法人」の活動内容は「公益財団法人」となった後も変わらず、貴社は、会費を支払って懇談会や研究会に無料で参加をしたり月刊誌の送付を受けたりすることになるものと思われる。


 すなわち、貴社が会費を支払った場合に寄附金を支払った場合と同様の状態となるということでなければ、貴社が支払う会費を「寄附金」とすることにはならないわけであるが、貴社が支払う会費は、懇談会や研究会への参加や月刊誌の受取りと直接の対応関係があるとまでは言えないものの、貴社が会費を支払って従来どおりに便益を受けることとなるものと思われる。


 このような点からすると、貴社が公益財団法人に支払う法人会員の会費に関しては、従来どおり、「会費」としてその全額を損金の額とすることでよいものと考えられる。


 なお、貴社の「法人会友」の会費に関しては、基本的には、質問にある「月刊誌」が「不特定多数の者に対して無償で配布される機関誌」(上記2(3)のパブリックサポートテストに関する国税庁の解説)に該当するのか否かで「会費」となるのかあるいは「寄附金」となるのかということを判断するのが適当であると考えられる。

 

 

5 貴社が公益財団法人に支払う「会費」の消費税法上の取扱い

 貴社が公益財団法人に対して支払う法人会員の会費に関しては、法人税法上の取扱いだけではなく、消費税法上の取扱いも問題となる。


 消費税法4条1項(課税の対象)においては、「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」とされており、この「資産の譲渡等」とは「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。」(消法2①八)とされている。


 貴社が行う会費の授受が「対価を得て行われる役務の提供」又はこれに類する行為に該当するのか否かによって、その会費の授受が消費税の課税取引となるのかあるいは不課税取引となるのかが決まることとなる。


 消費税法基本通達5-5-3(会費、組合費等)及び5-2-3(会報、機関紙(誌)の発行)においては、会費の取扱いが次のように示されている。

 


「5-5-3 同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等については、当該同
  業者団体、組合等がその構成員に対して行う役務の提供等との間に明白な対価関係がある
  かどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定するのであるが、その判定が
  困難なものについて、継続して、同業者団体、組合等が資産の譲渡等の対価に該当しない
  ものとし、かつ、その会費等を支払う事業者側がその支払を課税仕入れに該当しないこと
  としている場合には、これを認める。


 (注) 1 同業者団体、組合等がその団体としての通常の業務運営のために経常的に要す
    る費用をその構成員に分担させ、その団体の存立を図るというようないわゆる通
    常会費については、資産の譲渡等の対価に該当しないものとして取り扱って差し
    支えない。


   2 名目が会費等とされている場合であっても、それが実質的に出版物の購読料、映
    画・演劇等の入場料、職員研修の受講料又は施設の利用料等と認められるときは、
    その会費等は、資産の譲渡等の対価に該当する。


   3 資産の譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な会費、組合費等について、
    この通達を適用して資産の譲渡等の対価に該当しないものとする場合には、同業
    者団体、組合等は、その旨をその構成員に通知するものとする。」

 


「5-2-3同業者団体、組合等が対価を得て行う会報又は機関紙(誌)(以下5-2-3において
   「会報等」という。)の発行(会報等の発行の対価が会費又は組合費等の名目で徴収され
   ていると認められる場合の当該会報等の発行を含む。)は、資産の譲渡等に該当するので
   あるが、会報等が同業者団体、組合等の通常の業務運営の一環として発行され、その構成
   員に配布される場合には、当該会報等の発行費用がその構成員からの会費、組合費等によ
   って賄われているときであっても、その構成員に対する当該会報等の配布は、資産の譲渡
   等に該当しない。


  (注) 同業者団体、組合等が、その構成員から会費、組合費等を受け、その構成員に
   会報等を配布した場合に、当該会報等が書店等において販売されているときであっ
   ても、当該会報等が当該同業者団体、組合等の業務運営の一環として発行されるも
   のであるときは、その構成員に対する配布は、資産の譲渡等に該当しないものとし
   て取り扱う。」

 


 また、国税庁から、会費や入会金の取扱いに関して次のような具体的な指針が示されている。

 


 「No.6467 会費や入会金の仕入税額控除


  同業者団体や組合などに支払う会費や組合費などが課税仕入れになるかどうかは、そ
 の団体から受ける役務の提供などと支払う会費などとの間に明らかな対価関係があるか
 どうかによって判定します。


  したがって、セミナ-や講座などの会費は、講義や講演の役務の提供などの対価ですか
 ら課税仕入れとなり、仕入税額控除の対象になります。


  対価性があるかどうかの判定が困難なものについては、その会費などを支払う事業者
 とその会費などを受ける同業者団体や組合などの双方が、その会費などを役務の提供や
 資産の譲渡等の対価に当たらないものとして継続して処理している場合はその処理が認
 められます。なお、この場合には、同業者団体や組合などは、その旨をその構成員に通
 知するものとされています。


  また、その団体の業務運営に必要な通常会費については、一般的には対価関係があり
 ませんので、同業者団体や組合などは資産の譲渡等の対価に当たらないものとして取り
 扱って差し支えないこととされており、この場合には、その構成員においてはその通常
 会費は課税仕入れとならず、仕入税額控除の対象になりません。


  さらに、同業者団体や組合などに支払う入会金も、役務の提供などとの間に明らかな
 対価関係があるかどうかによって判定します。


  したがって、ゴルフクラブ、宿泊施設、体育施設、遊戯施設その他のレジャ-施設を利
 用するための会員となる入会金は、役務の提供などとの間に明らかな対価関係がありま
 すから、課税仕入れになります。


  なお、この場合の入会金は、脱退などに際し返還されないものに限られます。」

 


 上記の指針にあるとおり、会費が課税仕入に該当するのか否かは、「明らかな対価関係」の有無によって判断することとされている。


 上記4までにおいて述べた法人税における「会費」と「寄附金」を区分する基準が「対価性」の有無であったことと比べると、消費税においては、「明らかな対価」に限って課税取引としている、と言ってもよい状態となっている。


 そして、消費税においては、そのような観点に立って、「その団体の業務運営に必要な通常会費については、一般的には対価関係が(ない)」と考えて、「通常会費」の授受を不課税取引としているわけである。


 一見したところ、「会費」に関する消費税法上の取扱いと法人税法上の取扱いとが矛盾を来しているようにも受け取られかねないが、「対価」の認識に強弱があることを理解すれば、特に矛盾はないことを確認することができる。法人が支出する可否の損金性が問題となる法人税法においては、「対価性」があるということであれば「会費」とするとしているのに対し、会費に課税をするのか否かが問題となる消費税法においては、「明らかな対価関係」があるもののみを課税取引としている、という関係となっているわけである。


 このような点を踏まえて貴社が公益財団法人に対して支払う法人会員の会費の消費税法上の取扱いを考えてみると、貴社の会費は、質問の文面から判断する限り、「その団体の業務運営に必要な通常会費」に該当するものと考えられるため、消費税の取扱いにおいては、不課税取引となって仕入税額控除の対象とはならないものと考えられる。