Q&A

リース税制

 

価保証額及び割安購入選択権の行使価額とフルペイアウトの形式的要件

 会計上の90%基準(現在価値基準)は、解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値と、リース物件の見積現金購入価額の90%相当額を比較することになっており、そのリース料総額には、賃貸人の場合には、残価保証額及び割安購入選択権の行使価額を含むこととされています(適用指針15・17、設例2・3)。

 

 一方、税制上の90%基準は、その賃貸借期間において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額と、その資産の取得のために通常要する価額の90%相当額を比較することになっており(法令131の2②)、その賃借料の金額の合計額に、残価保証額及び割安購入選択権の行使価額を含むか否かについては、明確な規定がありません。

 

 残価保証額及び割安購入選択権の行使価額は、税制上の90%基準においても賃借人が支払う賃借料の金額の合計額に含んで判定を行うと考えてよろしいのでしょうか。

 「その賃貸借期間において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額」(法令131の2②)に、ご質問の残価保証額及び割安購入選択権の行使価額が含まれるか否かが問題となりますが、これらの金額は、賃借人が支払うことは間違いないものの、「その賃貸借期間において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額」には含まれないと考えられます。

 

 「残価保証額」は、次のとおり、法人税法施行令48条の2(減価償却資産の償却の方法)の5項6号に定義が設けられています。

 

法人税施行令48条の2(減価償却資産の償却の方法)
5この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一~五 省 略
六 残価保証額 リース期間終了の時にリース資産の処分価額が所有権移転外リース取引に係る契約において定められている保証額に満たない場合にその満たない部分の金額を当該所有権移転外リース取引に係る賃借人がその賃貸人に支払うこととされている場合における当該保証額をいう。

 

 この定義は、法人税法施行令48条の2の規定における定義とされていますが、法人税法上のリース取引における「残価保証額」の内容を示すものであることは間違いありません。

 

 この定義の規定の文言から明らかなように、残価保証額は、「保証額」とされており、これを「賃借料」と解することは困難です。

 

 リース契約において、残価保証額が「賃借料」とされている例はないものと考えられ、また、企業会計の取扱いにおいても、残価保証額は「賃借料」とはされていません。

 

 「割安購入選択権の行使価額」は、その文言どおり、割安購入選択権の行使があったときに支払うこととされている金額であって、当然のことながら、割安購入選択権の行使がなければ支払われることはなく、割安購入選択権の行使の対価として支払われるものですから、「賃借料」とは言えません。

 

 このような点からすると、税制上の90%基準では、会計上の90%基準(現在価値基準)とは異なり、これらの金額を含めないで判定するのが妥当であると考えられます。

 

 ところで、残価保証額については、「明文の規定や取扱いはないものの、残価保証額については、『その賃貸借期間において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額』に含まれると解されることが本誌の取材で明らかになった。」(税務通信3018号107、14頁)という本回答とは反対の見解も見受けられます。

 

 しかしながら、この見解には残価保証額が「その賃貸借期間において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額」に含まれるとする根拠が示されていません。
 残価保証額が「その賃貸借期間において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額」に含まれるとすれば、フルペイアウトの形式的要件の判定上、税法上のリース取引として判定される可能性が高くなり、税制上、納税者に不利な取扱いとなることがあります。

 

 租税法律主義の下においては、法令の規定なくして租税を課すことはできませんので、納税者は、租税の賦課の根拠となる法令の規定を正しく解釈して納税を行うこととなります。

 

 法人税法施行令48条の2の5項6号の規定の適切な解釈が上記のとおりであるとすれば、残価保証額及び割安購入選択権の行使価額は、同号の「賃借料」には含まれないこととなります。

 

 仮に、残価保証額を「賃借料」に含める取扱いとするということであれば、その旨を法令の規定に定める必要があります。