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1.外貨建定期預金の自動更新に伴う為替換算の要否

※T&Amaster(ロータス21)2012.09.17  No.467に掲載

 当社は、外貨建定期預金について、発生時換算法により為替換算をすることとしています。

 

 この度、3ヶ月満期の分について更新時に預金利息を受け取ることとなりますが、定期預金自体は、自動更新となっています。

 

 この場合、この自動更新時の預金元本の為替換算が必要となるのか否かがよく分かりません。

 

 所得税法においては、明文の規定が設けられており、外貨建取引から除外するものとされています(所法57の3①、所令167の6②)。また、国税庁から「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」という照会・回答の事例が公表されており、為替差益を認識する必要がないとされています。

 

 しかし、法人税法においては、このような規定も設けられていませんし、同様の公表事例も見当たりません。

 

 上記の場合の法人税における取扱いについて、ご教授をお願い致します。

 

要 旨

【マエストロの解説】

 

 外貨建定期預金の自動更新の場合には、その預金の為替差損益は計上しないこととするのが適当と考えられる。

 

1 所得税における取扱いの確認と検討

 ご指摘のとおり、所得税法57条の3第1項及び所得税法施行令167条の6第2項の規定においては、それぞれ次のように定められている。

 

 (外貨建取引の換算)

第57条の3 居住者が、外貨建取引(外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務
 の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいう。以下この条において同じ。)を行
 つた場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額(外国通貨で表示された金額を本邦通貨
 表示の金額に換算した金額をいう。次項において同じ。)は当該外貨建取引を行つた時に
 おける外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額
 を計算するものとする。

 

 (先物外国為替契約により発生時の外国通貨の円換算額を確定させた外貨建資産・負債の換算等)

 第167条の6 省略

 

2 外国通貨で表示された預貯金を受け入れる銀行その他の金融機関(以下この項において「金融機関」という。)を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、法第57条の3第1項に規定する外貨建取引に該当しないものとする。

 

 そして、国税庁から公表されている「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」(以下、「照会回答」という。)は、次のとおりである。

 

外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い

 

【照会要旨】

 A銀行に米ドル建で預け入れていた定期預金(以下「本件預金」といいます。)1万ドルが満期となったため、満期日に全額を払い出し、同日、本件預金の元本部分1万ドルをB銀行に預け入れました。この場合、B銀行に預け入れた時点で本件預金の元本部分に係る為替差益を所得として認識する必要はありますか。

 

•預入時のレート・・・1ドル=100円(円からドルへの交換と本件預金の預入は同日)

•払出時のレート・・・1ドル=110円

•為替差益・・・(110円-100円)×1万ドル=10万円

 

【回答要旨】

 為替差益を認識する必要はありません。

 

 外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、当該外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額によりその者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされています(所得税法第57条の3第1項)。

 

 ただし、外国通貨で表示された預貯金を受け入れる金融機関を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、上記の外貨建取引には該当しないものとされています(所得税法施行令第167条の6第2項)。

 

 したがって、外貨建預貯金として預け入れていた元本部分の金銭につき、①同一の金融機関に、②同一の外国通貨で、③継続して預け入れる場合の預貯金の預入については、外貨建取引に該当しないこととされていますので、その元本部分に係る為替差損益が認識されることはありません。

 

 この所得税法施行令第167条の6第2項の規定は、外貨建預貯金の預入及び払出が行われたとしても、その元本部分に関しては、同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりはなく、このような外貨の保有状態に実質的な変化がない外貨建預貯金の預入及び払出については、その都度これらを外貨建取引とすることにより為替差損益が認識されることは実情に即さないものであると考えられることから、所得税法第57条の3第1項でいう外貨建取引からは除かれることを明らかにした例示規定であると解されます。

 

 このようなことを踏まえると、本件預金の預入及び払出は、他の金融機関へ預け入れる場合であるとしても、同一の外国通貨で行われる限り、その預入・払出は所得税法施行令第167条の6第2項でいう外国通貨で行われる預貯金の預入に類するものと解され、所得税法第57条の3第1項の外貨建取引に該当しない、すなわち、為替差損益を認識しないとすることが相当と考えられます。

 

【関係法令通達】

 所得税法第57条の3、所得税法施行令第167条の6

 

 上記の照会回答は、所得税法施行令167条の6第2項の規定を解釈し、個別の照会に対して回答を行ったものであるが、この照会回答には、次のような疑問点が存在する。

 

○ 預貯金は金融機関を相手先とする消費寄託であって契約により成立する取引であるが、取引の相手先が変わっても、その為替差損益を計上しなくてよいのか

 

 預貯金は、現金と同じく「資産」ではあるが、現金とは異なり、金融機関を相手として契約によって成立する消費寄託である。所得税法施行令167条の6第2項の規定においても、「銀行その他の金融機関(以下この項において「金融機関」という。)を相手方とする当該預貯金に関する契約〔下線は引用者〕に基づき預入が行われる当該預貯金」と規定されている。

 

 貴社が「A銀行」に預け入れていた預金を「B銀行」に預け入れるということは、貴社が「A銀行」との取引を終了して、「B銀行」と取引を始める、ということであるが、所得税法施行令167条の6第2項の規定について、新たに異なる相手先との取引を始めても、従前の取引の為替差損益を計上させない、という解釈が妥当であるのか否かということに関しては、疑問なしとしない。

 

 近年は、「為替差を計上しなくてもよいのか」という問題だけでなく、「為替差を計上してはだめなのか」という問題も少なからず生じており、このいずれの問題にも答えられるしっかりとした解釈が求められることとなる。

 

○ 「外貨建取引」の換算が「外国通貨」の換算とは異なることが十分に理解されていないのではないか

 

 上記の照会回答においては、「実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりはなく、このような外貨の保有状態に実質的な変化がない」ということを理由として掲げているが、所得税法57条の3及び所得税法施行令167条の6の規定は、外貨建取引の換算に関する定めであり、外国通貨の換算の定めではない。

 

 「外貨建定期預金を保有している」という状態は、金融機関を相手先として外貨建取引を行っている状態であり、「外国通貨を保有している」という状態とは、根本的に異なる。

 

 本件においては、「A銀行」に持っていた外貨建定期預金が満期となって「A銀行」から外国通貨の支払いを受け、その外国通貨を「B銀行」に預け入れて外貨建定期預金とする場合に、その外国通貨の支払いを受けて終了した「A銀行」との間の外貨建取引の為替差損益を計上しなくてよいのか、ということが問われるわけである。

 

 また、上記の照会回答においては、照会されている外貨建預金の元本に関して、「同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく〔下線は引用者〕、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりはな(い)」と述べているが、「A銀行」から払い出した金額の全額を「B銀行」に預け入れるのであれば、利率、口数、期間などの契約内容を変更したとしても、元本の金額に増減がないことは、当然である。

 

○ 所得税法施行令167条の6第2項の規定は同一の金融機関に預け入れる場合にのみ適用される取扱いではないのか

 

 所得税法施行令167条の6第2項の規定は、上記のとおり、「当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入」とされており、この文言を正しく解釈するとすれば、同額の元本同一の金融機関、かつ、同一の外国通貨である場合の取扱いと解する必要があると思われる。

 

 すなわち、これらの三つの要件のいずれかが欠ける場合には所得税法施行令167条の6第2項の規定は適用されない、とする解釈が常識的な解釈ではないかと考えられる。

 

 このような解釈を採るとすれば、元本を増減させたり、取引相手先である金融機関を変更したり、異なる通貨で預入れを行ったような場合には、預貯金の為替差損益を計上しなければならない、ということになる。

 

 特に、取引相手先である金融機関を変更するということになると、利率などの契約内容が変わることとなるはずであり、従来の取引を継続しているとは言い難いのではないかと思われる。

 

 所得税法施行令167条の6第2項の規定においては、明確に「同一の金融機関」と定められており、金融機関が異なる場合にも同項の規定を適用するということであれば、その根拠を明確にする必要があると考える。

 

2 法人税における取扱いの検討

(1)法人税法における外貨建取引等の換算の取扱いの概要

 外貨建取引等に関する法人税法上の取扱いは、平成12年度改正において、抜本的に改正されて現在に至っている。この平成12年度改正前は、外貨建取引の換算について定めた現在の法人税法61条の8の規定に対応する規定は、そもそも存在しておらず、また、外貨建資産等の期末換算について定めた現在の61条の9の規定に対応する規定も、完全とは言い難い状況となっていた。この平成12年度の外貨建取引等の換算の取扱いに関する改正は、外貨建取引の換算に関する定めを設けたところに、最も大きな特徴があると言ってもよい。

 

 この外貨建取引の換算に関する定めである法人税法61条の8の規定は、次のとおりである。

 

(外貨建取引の換算)

第61条の8 内国法人が外貨建取引(外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の
 提供、金銭の貸付け及び借入れ、剰余金の配当その他の取引をいう。以下この目において同
 じ。)を行つた場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額(外国通貨で表示された金額を
 本邦通貨表示の金額に換算した金額をいう。以下この目において同じ。)は、当該外貨建取
 引を行つた時における外国為替の売買相場により換算した金額とする。

2~4 省略

 

 「外貨建取引」とは、上記引用文中にあるとおり、「外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れ、剰余金の配当その他の取引」とされている。この定義の文中には、「外貨建定期預金」に係る取引は例示されていないが、外貨建定期預金が満期を迎えて金融機関から外国通貨の支払いを受けることとなる取引は、「外国通貨で支払が行われる(中略)その他の取引」に該当し、「外貨建取引」となることは、間違いない。

 

 また、期末に有する外貨建ての資産及び負債に関しては、次のとおり、発生時換算法又は期末時換算法によって換算を行い、期末換算差益の額又は期末換算差損の額を益金の額又は損金の額に算入することとされている。

 

(外貨建資産等の期末換算差益又は期末換算差損の益金又は損金算入等)

 第61条の9 内国法人が事業年度終了の時において次に掲げる資産及び負債(以下この目にお
  いて「外貨建資産等」という。)を有する場合には、その時における当該外貨建資産等の金
  額の円換算額は、当該外貨建資産等の次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める方法(
  第一号、第二号ロ及び第三号に掲げる外貨建資産等にあつては、これらの規定に定める方法
  のうち当該内国法人が選定した方法とし、当該内国法人がその方法を選定しなかつた場合に
  は、これらの規定に定める方法のうち政令で定める方法とする。)により換算した金額とす
  る。

 

 一  外貨建債権(外国通貨で支払を受けるべきこととされている金銭債権をいう。)及び外貨建債務(外国通貨で支払を行うべきこととされている金銭債務をいう。) イ又はロに掲げる方法

イ・ロ 省略

二 省略

三 外貨預金 発生時換算法又は期末時換算法

四 外国通貨 期末時換算法

2~4 省略

 

 上記引用のとおり、期末に有する「外貨預金」の期末換算は、発生時換算法又は期末時換算法によることとされている。
 なお、期末に有する「外国通貨」の期末換算は、上記引用のとおり、期末時換算法によることとされており、発生時換算法を適用することは認められていない。

 

(2)外貨建取引等の換算に関する法人税法の規定の確認

 上記(1)において引用した法人税法61条の8の規定は、22条の規定の「別段の定め」ということになるが、本件に関しては、まず、61条の8第1項の規定がどのような内容の「別段の定め」であるのかということを確認しておく必要がある。

 

 法人税法61条の8第1項の規定は、「当該外貨建取引の金額の円換算額(省略)は、当該外貨建取引を行つた時における外国為替の売買相場により換算した金額とする」となっており、外貨建取引の金額の円換算額に関する「別段の定め」ということになっている。

 

 すなわち、法人税法61条の8第1項の規定は、外貨建取引の円換算を行うのか否かということに関する「別段の定め」ではなく、外貨建取引を行った場合には22条の規定によって益金の額又は損金の額が生ずるはずであるという前提に立ち、その場合の円換算額=金額に関する「別段の定め」となっているわけである(注)。

 

(注)内国法人が外貨建取引を行った場合にその円換算を行うこととする「別段の定め」を設けるということになれば、その円換算による換算額を益金の額又は損金の額に算入する旨の定めを設けることとなる。

 

 これは、法人税法61条の8の規定を創設した平成12年度改正において、外貨建取引の円換算に関しては、その取引が行われたときに円換算を行うという従来の取扱い自体には何ら問題はなく、円換算額について「別段の定め」を設けることで足る、と考えたためである。

 

 このため、円換算を行うのか否かということが問われる本件に関しては、法人税法61条の8の規定ではなく、22条(各事業年度の所得の金額の計算)の規定の解釈が問題となる。

 

 この法人税法22条の規定には、特に、外貨建取引の換算に関する取扱いが示されているわけではないため、本件に関しては、益金の額又は損金の額の取扱いの原則によって処理することとなる。

 

 法人税法22条の規定において、資産の含み損益等がどのような基準によって益金の額又は損金の額とされることとなるのかということを具体的なケースに基づいて考えてみると、資産が他の資産になったり、その資産がなくなったりした場合となっている。

 

 すなわち、資産の含み損益等を計上することとなるのは、基本的には、資産が変化した場合と捉えてよいものと考えられる。

 

(3)本件の取扱い

 上記(2)のような観点に立って、本件を眺めてみると、「外貨建定期預金」に関しては、満期となって自動更新されたとしても、その満期日が更新されるのみであり、その預け入れた金額、相手先、通貨、利率などの取引内容には変更がないことから、ある資産が他の資産に変化したとは言えない、と考えられる。確かに、満期日が更新されるという点では取引内容に変化が生じていることは事実であるが、これは、単に取引を延長したものと同視できる変化であり、取引の含み益又は含み損を益金の額又は損金の額に計上しなければならない程の変化とは解されない。

 

 このため、本件に関しては、「外貨建定期預金」の自動更新時に為替差益又は為替差損のいずれがあったとしても、それらの金額を益金の額又は損金の額とすることは適当でない、ということになると考えられる。

 

 本件と同様の問題は、「外貨建貸付金」や「外貨建借入金」などに関しても生ずることとなるが、これらに関しても、上記(2)のような観点に立ち、為替差益又は為替差損の取扱いを判断するのが適当であると考えられる。

 

<参考>

 法人税に関する照会への回答として、国税庁から次のような事例が公表されている。

 

輸入貿易手形借入金の期限延長

 

【照会要旨】

 A社が輸入代金支払のために外貨建約束手形を差し入れて本邦銀行から外貨資金を借り入れましたが、資金繰りの都合上その期限に支払ができなかったため、新たな支払期日を定めた手形と差し換えてもらいました(手形金額、利率等の条件は従前と全く同じです。)。

 

 この場合、その手形の差換えを借入金の返済及び新たな借入れとみて為替差損益を計上する必要がありますか。それとも、従前の借入れが継続しているものとして取り扱って差し支えありませんか。

 

【回答要旨】

 従前の借入れが継続しているものとして取り扱って差し支えありません。

 

(理由)

 照会のケースのように従前の借入れと同額、同一条件によるものについては、手形の差換えによる期限の延長があったにすぎない〔下線は引用者〕ものとして取り扱うことが相当と考えられます。

 

【関係法令通達】

 法人税法第61条の8第1項

 

 この国税庁の公表事例に関しては、関係法令を法人税法第61条の8第1項としていることには疑問が残るものの、取扱いの理由と結論には妥当性があると考えられる。

 

 なお、上記1において引用した照会回答のような事例に関しては、取引の相手先が変わるなど、取引内容に重要な変化が生じており、「期限の延長があったにすぎない」(上記参考の公表事例の「(理由)」参照)と言い得るようなものではないため、法人税法上の取扱いとしては、外貨建取引によって生じた為替差益又は為替差損の額をその外貨建取引が終了することとなる払出時の益金の額又は損金の額とするのが適当と考える。