Q&A

組織再編税制

 

19.外国子会社からの現物配当の取扱い

※T&Amaster(ロータス21)2013.03.18  No.491に掲載

 当社は、この度、外国の100%子会社から100%孫会社である3社の株式の現物配当を受ける予定です。


 この外国の100%子会社は、数年前、当社が100%外国子会社である5社の統括業務を移管するべく設立した外国法人であり、その5社の株式を現物出資したわけですが、その現物出資の際には、税制上、「適格現物出資」として処理しています。


 この度の現物配当は、この株式の現物出資を行った孫会社3社について、市場環境の変化に対応するための戦略変更により、当社が直接に統括業務を行う方がよい、という判断で、一部を戻すことになります。


 これらの孫会社は、業績がよく、それらの株式の時価は、現物出資時よりもかなり高くなっていますので、この現物配当が税制上で「非適格現物分配」ということになると、現物出資の時よりもかなり高い金額でそれらの株式の取得価額を付し、高額の受取配当等の額の95%を益金不算入とすることになります。


 税制上の現物出資の取扱いと現物配当の取扱いの違いがどのような理由によるものかということはよく分かりませんが、当社としては、法令の規定上、現物出資は「適格現物出資」として処理したことに問題はなかったものと考えており、また、現物配当は「非適格現物分配」とすることで問題はないのではないかと考えています。


 ただし、結果的には、多額の外国子会社の株式のキャピタルゲインが我が国で課税されないことになるため、やや不安に感じています。


 この現物配当の税務上の処理について、問題がないかどうか、ご教授をお願い致します。

 

要 旨

【マエストロの解説】

 

 貴社の現物配当は、税制上、「適格現物分配」とはならず、外国孫会社の株式の取得価額を時価とし、剰余金の配当等の額の95%を益金不算入とすることになる。 ただし、組織再編成に係る行為又は計算の否認(法法132の2)の規定の適用がないかどうかということには、注意が必要である。

 

1 組織再編成税制における「組織再編成」の意義


 組織再編成税制が創設された平成13年度改正当時、合併、分割、現物出資等に関しては、「組織再編成」という名称をもって統一的な取扱いを定めることとされたわけであるが、この「組織再編成」は、当時、「事業」を法人間で移転するものと想定されていた。


 すなわち、「事業」を移転するものが「組織再編成」であり、「事業」を移転するものはその「事業」の譲渡損益を計上する必要があるという理解を前提として、「事業」を従前のまま移転するものについては「適格組織再編成」と呼んで課税関係を従前のまま引き継がせることとする、とされたわけである。


 そして、その「事業」を従前のまま移転する「適格組織再編成」とはどのような組織再編成かということに関しては、企業グループ内の組織再編成に加えて共同事業を営むための組織再編成がこれに当たる、とされたわけである。この企業グループ内の組織再編成に関しては、本来は、100%グループ内の組織再編成のみとするべきであるが、実態を考慮し、50%超100%未満のグループ内の組織再編成を含むこととされた。


 この適格組織再編成の内の100%グループ内の組織再編成に関しては、その企業グループの一体性を考慮し、「事業」が移転したのか否かということにかかわらず、「適格組織再編成」とすることとされた。  しかし、この100%グループ内の組織再編成に関しては、「組織再編成」であるのか否かにかかわらず資産・負債の移転を帳簿価額によることとされたわけではないことに留意する必要がある。100%グループ内の資産・負債の移転であっても、「組織再編成」に該当しない譲渡による移転に関しては、従来どおり、資産・負債の移転は時価によることとされていた。


 すなわち、100%グループ内の組織再編成においては、「事業」を移転するものではない「組織再編成」による資産・負債の移転も含めて「適格組織再編成」として取り扱われることとなるが、このような取扱いがなされるものは、あくまでも「組織再編成」による移転に限られていた。


 このように、資産・負債の移転が「組織再編成」によるものであるのか否かということは、組織再編成税制においては、入口にある極めて重要な判断基準となっているわけである。

 

2 税法上の「現物出資」の位置付け


 「現物出資」に関しては、金銭以外の資産による出資をいい、法人税法以外の法律においても用いられてきた用語であって、その概念に疑問を差し挟む余地はない。この現物出資の対象となるものは、基本的には「資産」ということになるが、現物出資によって移転することができるものには「営業」又は「事業」が含まれており、その結果、「負債」も対象となる。これに関しても、異論はないはずである。


 ところで、かつて我が国においては、分割に関する法制が存在しなかったことから、現物出資を用いて実質的な「分割」が行われてきたところであり、分割法制が整備された現在においても、このような状況は変わっていない。


 組織再編成税制を創設した平成13年度改正は、商法に分割法制が導入された直後の税制改正であり、この組織再編成税制においては、現物出資を「組織再編成」に含めるのか否かということも検討されたが、最終的には、分割法制ができたとしても現物出資が従来どおりの用い方をされる状態が当分続く可能性が高いという判断により、現物出資を「組織再編成」に含めることとされた。


 このように、現物出資を「組織再編成」に含めるのか否かということが検討対象となったのは、現物出資は増資を資産で行うものにすぎず、本来は、「資本等取引」であるためである。

 

3 「現物分配」の位置付け


 「現物分配」という用語は、税制に固有の用語であり、平成22年度改正において初めて用いられたものである。


 この「現物分配」とは、次のように規定されている。

 

「 現物分配(法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)がその株主等に対し当該法人の次に掲げる事由により金銭以外の資産の交付をすることをいう。(省略)

 

イ 剰余金の配当(省略)

 

ロ 第24条第1項第3号から第6号まで(配当等の額とみなす金額)に掲げる事由」(法法2十二の六)


 要するに、法人が配当等(みなし配当を含む。)として金銭以外の資産の交付をすることが「現物分配」とされているわけである。


 「適格現物分配」に関しては、次のように規定されている。

 

「 適格現物分配 内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものをいう。」(法法2十二の十五)


 そして、このような定めを設ける理由に関しては、次のように解説が行われている。

 

「 適格現物分配については、組織再編成の一形態として位置づけられ(下線は、引用者。以下、同じ。)、貸倒引当金の引継ぎ等、他の適格組織再編成と同様の措置が講じられました。


   子法人から親法人への現物資産の移転については、合併、分割という方法を用いれば簿
  価引継ぎとなる一方、配当、残余財産の分配という方法を用いれば譲渡損益課税が行わ
  れ、手段によって課税上の取扱いが異なることとなっていたところです。今回の改正の共
  通項であるグループ法人の実質的な一体性に着目すれば、グループ法人間の現物分配の場
  合にも、資産の譲渡損益はいまだ実現していないものと考えられることから、現物分配に
  よる資産の譲渡損益課税の繰延制度が措置されたものです。」(財務省『平成22年度 税
  制改正の解説』210頁)


  この解説には、次のような疑問点がある。


 ① 「現物分配」を「組織再編成」と位置付けたのか、あるいは、「適格現物分配」のみを
  「組織再編成」と位置付けたのか。


 ② 「譲渡」という方法を用いれば譲渡損益課税が行われることとなるが、何故、「配当、
  残余財産の分配という方法」を用いて譲渡損益課税が行われることのみが問題ということ
  になるのか。


 ③ 「グループ法人の実質的な一体性に着目」して行うべきことは、譲渡損益調整資産の譲
  渡損益の繰延べの仕組みを設けることであって、「組織再編成」に「適格現物分配」を加
  えることではないのではないか。


 また、次のような解説も行われている。


 「 完全支配関係について、現物分配の直前に完全支配関係があることのみが要件とされ、
  その後の完全支配関係の継続見込みが要件とされていないのは、現物分配が他の組織再編
  成と異なり譲渡法人側に課税の繰延べポジションが残らない、いわば手仕舞い型の取引で
  あることによります。」(同前211頁)


 この解説に関しても、そもそも「手仕舞い型の取引」は課税を繰り延べる「適格組織再編成」に含めることができない取引ではないのか、という疑問がある。


 また、「事業」の移転に関して次のような解説も行われている。


 「 現物分配による事業の移転について、現物分配に伴って負債の移転をすること、
  すなわち、現物分配による事業の移転は、不可能ではないと考えられますが、現在特に実
  例やニーズがないこと、最も事業の移転として取り扱う実益のある残余財産の全部の分配
  については会社法(第502条)その他の法人法制上原則として債務を弁済した後でなけれ
  ば残余財産の分配ができないとされていることから、現物出資と異なり、現物分配に伴っ
  て行われる負債の移転と一体的に捉えて一取引と構成することはされていません。したが
  って、以下に述べる各制度における対応においても、事業の移転が前提とされているもの
  については措置されていません。」(同前211頁)


 この解説からも分かるとおり、「事業」が移転する現物分配は「適格現物分配」とはされず、「適格現物分配」とされるものは「事業」が移転しないものとする、という考え方が示されているが、このように、「事業」が移転するものを「非適格」とするという考え方は、従来の組織再編成税制の考え方とは正反対のものである。


  (備考)このような改正が行われると、「組織再編成税制における「組織再編成」とはそ
    もそも何なのか」「組織再編成税制の基本的な考え方や理論は、一体、どうなったの
    か」組織再編成税制が分からなくなった」というような声が出てくるのも、蓋し当然
    と考えられる。


 以上の点からも分かるとおり、「現物分配」「適格現物分配」の取扱いに関しては、本来は、「資本等取引税制」として整備するべきところを「組織再編成税制」と位置付けたことによってさまざまな課題が生ずることとなり、「組織再編成税制」が分かり難いものとなっていることは、否定できない。 ご質問の「税制上の現物出資の取扱いと現物配当の取扱いの違い」に関しては、上記のとおり、組織再編成税制における「現物出資」と「現物配当」の位置付けの違いをよく認識した上で理解する必要がある。

 

4 貴社のケースの現物分配の取扱い

(1)我が国の法人税法上の剰余金の配当等に該当するのか否かの確認


 貴社の外国子会社からの現物配当に関しては、まず、我が国の法人税法上の剰余金の配当等に該当するのか否かということを確認しておく必要がある。


 特に開発途上国においては、法制上、現物配当が認められていない国も少なからずあり、そのような国においては、「現物」の移転は「配当」ではなく「譲渡」とされているのが通例である。


 このため、貴社の外国子会社が行う「現物配当」が我が国の法人税法23条1項1号の剰余金の配当等に該当するのか否かということが問題となる。


 仮に、この「現物配当」が我が国の法人税法上の剰余金の配当等に該当しないということであれば、外国子会社配当益金不算入制度(法法23の2)の適用を受けることができない、ということになる。


 上記3において述べたとおり、「現物分配」に関しては、「事業」を移転するものを含まない、という考え方が採られているため、外国孫会社の統括業務を移転することとなる貴社の場合には、やや注意が必要となる。


 この点に関しては、法令の規定においては「現物分配」に関して「事業を移転するものを除く」という旨の定めは存在しないこと、そして、仮に「現物分配」に該当しないという場合であっても剰余金の配当等に該当するということであれば外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けることができる、ということを指摘しておきたい。


 この問題は、事実関係の如何によって結論が変わるものであるが本稿で事実認定を行うことはできないことから、一応、この「現物配当」が我が国の法人税法上の「現物分配」に該当するという事実認定を行い得る、という前提に立つこととする。

 

(2)「適格現物分配」に該当するのか否かの判断


 次に、この「現物分配」が「適格現物分配」に該当するのか否かということが問題となる。


 「適格現物分配」の定義は、上記3に掲げたとおりであるが、内国法人が現物分配法人でなければならないため、貴社の外国子会社の「現物分配」は、「適格現物分配」には当たらないこととなる。


 このため、貴社が外国子会社から「現物分配」によって交付を受ける外国孫会社の株式(現物分配後は外国子会社の株式)は、時価、即ちその株式の取得のために通常要する価額を取得価額とすることとなる。


 そして、貴社が受け取る外国子会社からの剰余金の配当等に関しては、外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける要件が満たされている場合には、その剰余金の配当等の額の95%を益金不算入とすることができることとなる。


  <参考>内国法人から「適格現物分配」に該当しない「現物分配」によって資産の交付を
    受けた場合には法人税法23条1項(受取配当等の益金不算入)の規定によって「配当
    等の額」を益金不算入とし、「適格現物分配」によって資産の交付を受けた場合には
    62条の5第4項(適格現物分配による収益の額の益金不算入)の規定によって「収益
    の額」を益金不算入とすることとされている。


 このような処理を行えば、結果的には、外国孫会社の株式のキャピタルゲインが外国で計上されて我が国の課税が行われない状態となるが、我が国の税法上、そのような結果となること自体が特に問題視されることとはならない。

 

(3)租税回避否認に対する注意


 上記3において述べたとおり、平成22年度改正においては、「適格現物分配」に該当しない「現物分配」が「組織再編成」と位置付けられたのか否かということが明確ではないわけであるが、法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)の規定においては、合併等に「現物分配」を加える改正が行われている。  このため、現物配当(みなし配当や認定配当を含む。)を行えば、合併等を行った場合と同様に、法人税法132条の2の規定の適用を受ける可能性がある、ということになる。  貴社の場合、現物出資から現物配当までの全体を見て、現物出資の処理だけでなく、現物配当の処理に関しても、法人税法132条の2の規定の適用を受けることがないかどうかということを検討しておいた方がよいと考えられる。