Q&A

組織再編税制

 

25.組織再編成における資産・負債の承継の誤りの是正

※T&Amaster(ロータス21)2016.03.21  No.635に掲載

 当社は、100%子会社との間で、当社が分割法人となり、子会社が分割承継法人となる会社分割(吸収分割)を行いましたが、会社分割によって当社から子会社に引き継ぐ資産と負債に引継ぎの誤りがあったことが判明しました。

 

 このため、これらの誤りを是正しなければならないわけですが、これらの誤りがあることを以って、寄附金・受贈益の認定が行われたり、非適格分割と判定されたりすることがないか、また、これらの誤りの是正が寄附金・受贈益と認定されたりすることがないか、ということを心配しています。

 

 組織再編成による資産と負債の承継の取扱いに関しては、多くの書物や解説書に記載されていますが、誤りがあった場合の取扱いに関しては、解説等が全く見当たりません。

 

 上記の寄附金・受贈益の認定の有無と非適格分割という判定の有無について、ご教授をお願いします。

 

要 旨

【マエストロの解説】

 分割において資産や負債の引継ぎを誤ったことが明らかであってその是正が適切に行われるということであれば、受贈益・寄附金という事実認定が行われたり、分割が非適格と判定されたりすることはないはずである。

 

確かに、組織再編成における資産や負債の承継の誤りがあった場合に、どのように対応し、税制上の取扱いがどうなるのかということに言及した解説等は見当たらないように思われるが、特に、法令の難解な条文の解釈が問題となるというわけではなく、常識に従って判断することで足るものと考えられる。

 

 

1 資産・負債の承継の誤りの一般的な態様

 

  分割などの組織再編成においては、分割法人から分割承継法人などに引き継ぐ資産や負債に誤りがあったことが後に判明し、その誤りをどのように処理するのかということが問題となることがある。

 

  合併の場合には、被合併法人の全ての資産及び負債が合併法人に引き継がれるため、通常はそのような問題は生じないが(注)、法人の資産と負債の一部が他の法人に引き継がれる分割や現物出資などにおいては、そのような問題が生ずることがある。

 

 (注)合併に関しても、かつては、被合併法人が財産の一部を合併法人に引き継がずに被合併法人の株主に渡す「合併除外財産」と言われるものの取扱いが問題となることがあったが、近年は、そのようなものは見受けられない。

 

 分割によって分割法人から分割承継法人に引き継がれる資産と負債は、基本的には、引き継がれる事業に係る資産と負債となっており、分割における資産と負債の引継ぎの誤りは、通常、分割契約書に定めたとおりに資産と負債が引き継がれておらず(注)、資産の誤承継若しくは承継漏れ又は負債の誤承継若しくは承継漏れということになっているものと思われる。

 

 (注)会社法759条1項(株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生等)においては、吸収分割について、「吸収分割承継会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する」とされている。

 

 

2 承継の誤りの是正の方法

 

 上記1で述べた承継の誤りがある場合には、分割法人又は分割承継法人の分割後の日々の実務や監査等でその誤りが判明することが多いものと思われる。

 

 当然のことながら、このような承継の誤りが判明した場合には、それをどのように是正するのかということが問題となる。

 

 その是正の方法としては、承継の誤りの態様に応じていくつかの方法を考える必要があるが、最も多く採られることとなるのは、資産や負債の承継の誤りを正しく修正し、その修正の結果としてそれぞれの法人間で受払いをすべきこととなる資産と負債を授受する、という方法であろうと考えられる。

 

 次の3において、このような方法で誤りを是正するケースについて、税制上の取扱いを可能な限り具体的に説明することとするが、ご質問の例に合わせて、分割は、分割法人が親会社でありその親会社に株式の100%を保有される子会社が分割承継法人である吸収分割で、税制上、適格分割として処理が行われていたものとする。

 

 

3 是正の税制上の取扱い

 

 (1)資産の誤承継の是正の取扱い

 

 最初に、分割において分割法人の資産(売掛金)を誤って分割承継法人に承継していたことが後に判明したため、その是正を行うというケースについて、税制上の処理がどうなるのかということを考えてみよう。

 

 このケースについて、正しく資産を引き継ぐ(すなわち、売掛金を引き継がない)とすれば、次の仕訳で示す是正の処理を行うことが必要となる。

 

      <分割法人>               <分割承継法人>

 

  売掛金××× / 子会社株式×××  資本金等の額××× / 売掛金×××

 

 分割承継法人が分割後に売掛金の回収を行っていたとしたら、さらに、次の処理を行って相互に未収金と未払金を計上することが必要となる。

 

      <分割法人>               <分割承継法人>

 

  未収金××× / 売掛金×××       売掛金××× / 未払金×××

 

 この未収金と未払金を精算すれば、結果的には、いずれの法人も分割において承継するべき資産のみを正しく承継した状態と同じ状態になる。

 

 分割時における分割法人から分割承継法人への売掛金の引継ぎが誤りであってその是正が行われることが明らかであれば、その誤って行われた売掛金の引継ぎとその誤りの是正のために行われる未収金と未払金の清算とが寄附金・受贈益と認定されることはないはずである。この誤って行われた売掛金の引継ぎは、寄附や贈与と事実認定をすることができる性質のものではなく、未収金と未払金の清算についても、同様に、寄附や贈与と事実認定をすることができる性質のものでないことが明らかである。

 

 なお、上記の説明は、資産や負債の承継が誤りであることが明らかであるということを前提とするものであり、ご質問のケースにおいては、後にその是正が行われるということから、分割による資産と負債の承継が間違いなく誤っていたと判断される、という認識の下に本稿における説明を行っている点に留意されたい。

 

 

 (2)資産の承継漏れの是正の取扱い

 

  次に、上記(1)とは反対に、分割において分割承継法人に承継しなければならなかった分割法人の資産(売掛金)を誤って分割承継法人に承継していなかったことが後に判明したため、その是正を行うというケースについて、税制上の処理がどうなるのかということを考えてみよう。

 

 このケースについて、正しく資産を引き継ぐ(すなわち、売掛金を引き継ぐ)とすれば、次の仕訳で示す是正の処理を行うことが必要となる。

 

        <分割法人>             <分割承継法人>

 

  子会社株式××× / 売掛金×××     売掛金××× / 資本金等の額×××

 

 分割法人が分割後に売掛金の回収を行っていたとしたら、さらに、次の処理を行って相互に未払金と未収金を計上することが必要となる。

 

      <分割法人>               <分割承継法人>

 

  売掛金××× / 未払金×××       未収金××× / 売掛金×××

 

 この未払金と未収金を精算すれば、結果的には、いずれの法人も分割において承継するべき資産を正しく承継した状態と同じ状態になる。

 

 分割時に分割法人から分割承継法人への売掛金の引継ぎが誤って漏れていたためにその是正が行われることが明らかであれば、その売掛金の引継ぎ漏れとその誤りの是正のために行われる未払金と未収金の清算とが寄附金・受贈益と事実認定されることはないはずである。

 

 また、分割の時点だけを見ると、分割法人が売掛金相当額だけ資産が多く残った状態となっているわけであるが、この状態が、分割承継法人が分割対価として売掛金を分割法人に交付したことによって生じたものではなく、誤って売掛金を引き継がなかったことによって生じたものであることが明らかであれば、この分割が非適格分割とされることもないはずである。

 

 

 (3)負債の誤承継の是正の取扱い

 

 資産だけではなく、負債についても引継ぎを誤るということがあるわけであるが、分割において分割法人の負債(買掛金)を誤って分割承継法人に承継していたことが後に判明したため、その是正を行うというケースについて、税制上の処理がどうなるのかということを考えてみよう。

 

 このケースについて、正しく負債を引き継ぐ(すなわち、買掛金を引き継がない)とすれば、次の仕訳で示す是正の処理を行うことが必要となる。

 

         <分割法人>            <分割承継法人>

 

  子会社株式××× / 買掛金×××     買掛金××× / 資本金等の額×××

 

 分割承継法人が分割後に買掛金の支払いを行っていたとしたら、さらに、次の処理を行って相互に未払金と未収金を計上することが必要となる。

 

       <分割法人>              <分割承継法人>

 

  買掛金××× / 未払金×××       未収金××× / 買掛金×××

 

 この未払金と未収金を精算すれば、結果的には、いずれの法人も分割において承継するべき負債のみを正しく承継した状態と同じ状態になる。

 

 分割時における分割法人から分割承継法人への買掛金の引継ぎが誤りであってその是正が行われることが明らかであれば、その誤って行われた買掛金の引継ぎとその誤りの是正のために行われる未払金と未収金の清算とが寄附金・受贈益と事実認定されることはないはずである。

 

 また、分割の時点だけを見ると、分割法人が買掛金相当額だけ純資産が多く残った状態となっているわけであるが、この状態が、分割承継法人が分割対価として資産を分割法人に交付したことによって生じたものではなく、誤って買掛金を引き継いだことによって生じたものであることが明らかであれば、この分割が非適格分割とされることもないはずである。

 

 

 (4)負債の承継漏れの是正の取扱い

 

 次に、分割において分割承継法人に承継しなければならなかった分割法人の負債(買掛金)を誤って分割承継法人に承継していなかったことが後に判明したため、その是正を行うというケースについて、税制上の処理がどうなるのかということを考えてみよう。

 

 このケースについて、正しく負債を引き継ぐ(すなわち、買掛金を引き継ぐ)とすれば、次の仕訳で示す是正の処理を行うことが必要となる。

 

       <分割法人>              <分割承継法人>

 

  買掛金××× / 子会社株式×××  資本金等の額××× / 買掛金×××

 

 分割法人が分割後に買掛金の支払いを行っていたとしたら、さらに、次の処理を行って相互に未収金と未払金を計上することが必要となる。

 

       <分割法人>              <分割承継法人>

 

  未収金××× / 買掛金×××       買掛金××× / 未払金×××

 

 この未収金と未払金を精算すれば、結果的には、いずれの法人も分割において承継するべき負債を正しく承継した状態と同じ状態になる。

 

 分割時に分割法人から分割承継法人への買掛金の引継ぎが誤って漏れていたためにその是正が行われることが明らかであれば、その買掛金の引継ぎ漏れとその誤りの是正のために行われる未収金と未払金の清算とが寄附金・受贈益と事実認定されることはないはずである。

 

 

 (5)是正の処理の事業年度

 

 上記(1)から(4)までの是正の処理をいずれの事業年度の処理として行うかという点に関しては、これらの是正が誤りに因るものであって後発的事由等に因るものではないことから、分割の処理を行う事業年度と売掛金の回収又は買掛金の支払いを行った事業年度の処理として行う必要があるということになる。

 

 ただし、全体として納税額に全く影響がないか又は殆ど影響がないというような場合には、誤りが判明した日の属する事業年度において一括して処理を行うことも、実務上は容認され得るものと思われる。