書物・出版物

医療法人の法務と税務

朝長 英樹【監修】

佐々木克典 竹内 陽一【編著】

長谷川敏也 吉田 久子 鈴木 達也 山田 純也【共著】

単行本・750ページ

法令出版(2009/12/22)

定価4,300円(税込)

 

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はしがき

 

 近年、医療法人の法制と税制の見直しが続いています。

 

 平成19年から施行された第5次医療法改正においては、株式会社の医療参入の阻止や非営利性の形骸化見直しの観点から、医療法人の解散時残余財産を出資者に帰属させないとする改正や公益性が高い医療を担う社会医療法人制度の創設などがなされ、50年以上経過した医療法人制度が抜本的に見直されています。

 

 また、平成20年の税制改正においては、医療法人が設立の際に受ける寄附金が法人税の課税対象とならないこと、公益法人である社会医療法人が行う医療保険業が収益事業から除外されること、贈与税の納税義務が生ずる法人に医療法人が含まれることなど、医療法人に関係する大きな改正が行われるとともに、公益法人制度改革に伴う税制措置が講じられたところです。

 

 このような近年の法制と税制の大きな改正により、医療法人においては、法務と税務が益々重要な課題となってきました。

 

 しかしながら、医療法人の法務と税務に関しては、従来、その疑問点等に十分な回答を与える書籍等が存在しておらず、実務においては、これらの疑問点等を解決しないまま行われている状況でした。

 

 このような事情を考慮し、医療法人の法務と税務に関するさまざまな疑問点等に適切な回答を示すことを企図して、この度、本書を起稿することとしたわけです。

 

 本書においては、佐々木克典税理士をはじめとして医療法人の法務と税務に関する実務経験が豊富な執筆陣が、医療法人の実務において生ずる多くの疑問点等を抽出し、その疑問点等に対して、医療法をはじめとする関係法令や各種通知等を踏まえ、深度ある検討を行い、充実した内容の回答を提示しています。

 

 このため、本書は、医療法人の法務と税務の実務に携わる皆様方の良き参考書となっているものと考えます。

 

 ただし、初版である本書には、実務における疑問点等を十分に拾いきれていないなど、未だ足りないところもあるかと思われます。そのような部分に関しては、読者の皆様方からご教授を賜りつつ、内容を充実させていきたいと考えておりますので、お気付きの点がございましたら、日本税制研究所又は執筆者にお知らせ頂きたくお願い申し上げます。

 

 最後になりましたが、本書の出版にご協力頂いた法令出版の皆様方に、厚く御礼を申し上げます。

 

 日本税制研究所 代表理事
 税理士法人 アクト22 代表社員 朝長英樹

目   次

 

第Ⅰ部 医療法人の法務

第1章 医療法人制度の沿革 2
 第1節 医療法人制度の沿革 2
 第2節 経過措置型医療法人と新設医療法人の差異 113
 第3節 医療法人制度が改正された理由 114
 第4節 非営利の意味 116
第2章 医療法人の種類  120
 第1節 医療法人の種類 120
 第2節 特例民法法人と医療法人の違い 194
第3章 医療法人の設立 196
 第1節 定款の作成 196
 第2節 社員・理事・監事・評議員の選任 197
 第3節 名称の制定  200
 第4節 設立時の財産 202
 第5節 債務の承継 205
 第6節 リースの承継 212
 第7節 業務範囲 215
 第8節 附帯業務 217
 第9節 認可と許可の違い 223
 第10節 保有資産と20%基準の廃止 224
 第11節 出資と基金 225
第4章 医療法人の組織 236
 第1節 医療法人の組織の概要 236
 第2節 社団医療法人の組織 236
 第3節 財団医療法人の組織 242
 第4節 特定医療法人の組織 243
第5章 医療法人の運営 244
 第1節 社員総会議事録の作り方 244
 第2節 理事会議事録の作り方 265
 第3節 評議員会議事録の作り方 270
 第4節 事業報告書等の作成 278
 第5節 定款・寄附行為の変更 296
 第6節 利益相反取引と特別代理人選任 303
第6章 医療法人の事業譲渡・合併・解散等 306
 第1節 事業譲渡 306
 第2節 合併 308
 第3節 解散 310
 第4節 出資持分の移動 312
 第5節 出資持分の定めをなくす定款変更 313
 第6節 出資持分の定めに関する定款変更 315
 第7節 退社払戻し 317
第7章 医療法人の会計 320
 第1節 医療法人の会計制度の概要 320
 第2節 事業報告書等 322
 第3節 病院会計準則 324
 第4節 科目の並べ替え比較 384
 第5節 介護事業経営実態調査表 385
 第6節 社会医療法人債発行法人会計基準 386
 第7節 指定老人訪問看護の事業及び指定訪問看護の事業の会計経理準則 387
 第8節 介護老人保健施設会計・経理準則 388

第Ⅱ部 医療法人の税務

第1章 医療法人税制の沿革 444
 第1節 医療法人制度の創設(昭和25年) 444
 第2節 医療法人の贈与税課税制定(昭和27年) 445
 第3節 医療法人への寄附に対する非課税基準制定(昭和38年) 446
 第4節 特定医療法人制度の創設(昭和39年) 447
 第5節 常勤医師数制限の撤廃(昭和61年) 448
 第6節 出資額限度法人の定款例策定(平成7年) 449
 第7節 特別医療法人制度の創設(平成10年) 450
 第8節 特定医療法人の継続申請制度の制定(平成15年) 451
 第9節 出資額限度法人税制の明確化(平成16年) 452
 第10節 特別医療法人の移行時非課税の明確化(平成17年) 453
 第11節 持分の定めのある社団制度の廃止(平成19年) 454
 第12節 医療法施行に伴う税制改正(平成20年) 456
第2章 医療法人の法人税 458
 第1節 法人税法上の法人の種類 458
 第2節 医療法人の資本等 459
 第3節 所得金額の計算 462
 第4節 収益の計上時期 463
 第5節 未収入金の貸倒れ計上 470
 第6節 役員報酬・給与・退職給与 473
 第7節 特別償却・税額控除 483
 第8節 医療法人の負担する会費等 513
 第9節 産業医の報酬 515
 第10節 社会保険診療の所得計算の特例 516
 第11節 税率 519
 第12節 持分の定めのない医療法人の所得計算の取扱い 521
 第13節 特定医療法人・特別医療法人の取扱い 524
 第14節 社会医療法人の取扱い 562
 第15節 新法医療法人の設立等 571
 第16節 持分の定めをなくす定款変更 573
 第17節 合併等組織再編成 581
 第18節 事業譲渡・現物出資 594
 第19節 解散 597
 第20節 休眠法人を取得した場合の税務 599
 第21節 基金返還の場合の課税 600
第3章 医療法人の消費税 604
 第1節 医療法人の消費税申告の特徴 604
 第2節 課税取引と非課税取引 605
 第3節 医療法人と仕入れに係る消費税 623
 第4節 指定管理者と消費税 627
 第5節 特定収入と消費税 628
 第6節 控除対象外消費税 629
 第7節 総額表示 631
第4章 医療法人の所得税 632
 第1節 給与 632
 第2節 経過措置型医療法人のみなし配当・出資持分の譲渡 641
 第3節 医療法人税制の設立・移行総括表 644
 第4節 新法医療法人の設立に伴い拠出した財産の取扱い 646

 第5節 経過措置型医療法人の持分の定めのない社団医療法人への移行の取扱い 650

第5章 医療法人の相続税・贈与税 652
 第1節 医療法人の相続税・贈与税の概要 652
 第2節 経過措置型医療法人等の相続の取扱い 660
 第3節 医療法人の設立の際の取扱い 682
 第4節 経過措置型医療法人の持分の定めのない医療法人への移行の取扱い 684
 第5節 持分の定めのない医療法人への移行事例と課税関係 690
 第6節 小規模宅地等の減額特例(特定同族会社事業用宅地等) 697
 第7節 その他の取扱い 699
第6章 医療法人の印紙税 702
 第1節 基本的な取扱い 702
 第2節 課税文書の主な留意点 704
第7章 医療法人の地方税 712
 第1節 事業税 712
 第2節 事業所税 725
 第3節 固定資産税 726
 第4節 住民税 727
 第5節 不動産取得税 728

<資料等一覧>

 

【資料1】医療法の一部を改正する法律の施行に関する件(昭和25年8月2日厚生省発医第98号各都道府県知事宛厚生事務次官通知) 8

【資料2】医療法の一部改正について(昭和60年12月27日厚生省発健政第112号各都道府県知事宛厚生事務次官通知) 10

【資料3】医療法の一部改正について(平成4年7月1日厚生省発健政第82号各都道府県知事宛厚生事務次官通知) 14

【資料4】医療法の一部を改正する法律の一部の施行について(平成4年7月1日健政発第418号各都道府県知事宛厚生省健康政策局長通知) 18

【資料5】医療法の一部改正について(平成9年12月26日厚生省発健政第232号各都道府県知事宛厚生事務次官通知) 20

【資料6】医療法人制度について(平成19年3月30日医政発第0330049号各都道府県知事宛厚生労働省医政局長通知) 25

【資料7】医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について(平成5年2月3総第5号・指第9号厚生省健康政策局総務課長・厚生省健康政策局指導課長通知) 117

【資料8】医療法人の種類 120

【資料9】医療法42条の2の1項5号に掲げる厚生労働大臣が定める基準について 128

【資料10】医療法42条の2の1項6号に掲げる公的な運営に関する厚生労働省令で定める要件について 135

【資料11】社会医療法人の認定申請等関係書類 139

【資料12-①】種類別医療法人数の年次推移 190
【資料12-②】都道府県別医療法人数 192

【資料13】医療法人に対する出資又は寄附について(平成3年1月17日指第1号東京弁護士会会長宛厚生省健康政策局指導課長回答) 199

【資料14】医療法人の開設する病院等の名称について(平成3年2月26日指第12号香川県衛生部長宛厚生省健康政策局指導課長回答) 200

【資料15】医療機関の非営利性の確認と名称について(平成10年10月9日総第28号・指第63号各都道府県衛生主管部(局)長宛厚生省健康政策局総務課長・厚生省健康政策局指導課長通知) 201

【資料16】賃貸借契約に関する覚書(記入例) 203
【資料17】設立時の負債内訳書(記入例)等 206
【資料18】リース物件一覧表(記入例)等 213

【資料19】医療法人の基金について(平成19年3月30日医政発第0330051各都道府県知事宛厚生労働省医政局長通知) 227

【資料20】医療法人の理事要件等について 240
【資料21】社員名簿・役員名簿 252
【資料22】医療法人運営管理指導要綱 253

【資料23】医療法人における事業報告書等の様式について(平成19年3月30日医政指発第0330003号厚生労働省医政局指導課長通知) 283

【資料24】医療法人の定款(寄附行為)変更認可申請書 298
【資料25】医療法人の登記事項の届出書 299

【資料26】行政手続法の施行に伴う審査基準等の設定について(平成6年10月31日健政発第782号各都道府県知事宛厚生省健康政策局長通知) 300

【資料27】特別代理人申請の必要書類例 303
【資料28】特別代理人選任申請書 305

【資料29】いわゆる「出資額限度法人」について(平成16年8月13日医政発第0813001号厚生労働省医政局長通知) 316

【資料30】医療法人の社員の退社について(平成3年10月30日指第70号福岡県弁護士会会長宛厚生省健康政策局指導課長回答) 318

【資料31】病院会計準則の改正について(平成16年8月19日医政発第0819001号各都道府県知事宛厚生労働省医政局長通知) 327

【資料32】病院会計準則適用ガイドラインについて(平成16年9月10日医政発第0910002号各都道府県知事宛厚生労働省医政局長通知) 367

【資料33】各会計・経理準則における勘定科目の相違 384

【資料34】規制改革についての見解(平成12年12月12日・行政改革推進本部規制改革委員会) 455

【資料35】医療法人に対する中小企業者等の機械の特別償却の適用について 485
【資料36】特定医療法人の承認タイムスケジュール例(3月決算の場合) 527
【資料37】特定医療法人の要件を満たす施設を開設していることの証明願 529
【資料38】事前審査時に用意する書類一覧 533
【資料39】付表1の収入区分 549
【資料40】厚生局に提出する書類一覧 550
【資料41】変更・異動届出書 559
【資料42】特定医療法人の承認申請の承認通知書 561
【資料43】社会医療法人認定申請書 563
【資料44】社会医療法人の認定の取消について 564
【資料45】特定普通法人が公益法人等になる場合の税制上の取扱い 566
【資料46】社会医療法人の認定に関する届出書 567
【資料47】特定公益法人等が普通法人となる場合の税制上の取扱い 568
【資料48】特定医療法人の法人税率の特例の適用の取りやめの届出書 570

【資料49】消費税法の改正について(平成3年6月19日健政発第362号各都道府県・各指定都市衛生主管部(局)長宛厚生省健康政策局長通知) 611

【資料50】医療法人税制(現物拠出・移行関係総括表) 645
【資料51】医療法人(その他の産業で小売業・サービス業)の法人区分早見表 662
【資料52】評価明細書の記載要領等 666
【資料53】課税物件一覧表 707
【資料54】医療法人等の社会保険診療報酬に係る所得の課税除外 713
【資料55】医療法人等に係る所得金額の計算書 716
【資料56】医療法人等に係る所得金額の計算書(記載の手引き) 717

 

【参考法令】
1 医療法(昭和二十三年七月三十日法律第二百五号)(抄) 390
2 医療法施行令(昭和二十三年十月二十七日政令第三百二十六号)(抄) 412
3 医療法施行規則  (昭和二十三年十一月五日厚生省令第五十号)(抄) 427

 

【役員退職金Q&A】

Q1 理事長兼院長が、理事長と院長を退職し、常勤医師となった場合に、役員退職金の損金算入が認められるか。 478

Q2 理事長兼院長が、理事長と院長を退職し、常勤医師になり、給料を50%以下とした場合に、役員退職金の損金算入が認められるか。 481

Q3 理事長兼院長が、理事長と院長を退職し、非常勤医師となった場合に、役員退職金の損金算入が認められるか。 481

Q4 常勤医師が理事となった場合に、常勤医師であった期間の退職金の損金算入が認められるか。 482