書物・出版物

リース税制【第二版】

朝長 英樹【編著】 大塚 直子 新沼 潮  池田 祐介【著】

単行本・485ページ

法令出版(2012/11/02)

定価3,600円

 

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第二版 序

 

 我が国においては、リース取引は、企業に設備と資金の両面で貢献するビジネスツールとして、広く利用されてきました。

 

 これは、設備の取得、その資金の手当て、設備の維持管理という企業の業務に不可欠な行為を一体として行うことができる統合ビジネスとしてのリース取引の優れた特性に拠るところが大きいものと考えられます。

 

 本書は、このリース取引に係る税制に関して、深度のある解説を行うことを主たる目的とするものです。他の類書と比較してもらうと分かるとおり、本書は、この分野における最も高い水準の解説書となっていると考えています。

 

 初版の「はじめに」においても述べましたが、本書は、特に、①法令の規定に即した解釈を行う、②リース取引の特性を十分に踏まえてあるべき税制を追求する、③リース取引の法的性質と経済的実態を的確に把握して法令の解釈やあるべき税制の検討を行う、④まず賃貸人の取扱いを解説してその後に賃借人の取扱いを解説して検討する、ということに留意して起稿しています。

 

 また、本書は、リース税制の基本的な考え方がどのようなものかということについても詳しく論じており、加えて、あるべきリース税制の考え方と仕組みに関しても、深く検討を行っています。このような論究は、類書にはない特徴となっているものであり、本書がいわゆるハウツー本を超えた解説書となっていることを確認して頂けるものと考えます。

 

 そして、第二版においては、初めてリース税制に触れる読者の方々にも気軽に本書を手に取って頂けるように、新たに著者による座談会の記録を掲載するとともに、Q & A を大幅に充実させています。

 

 これにより、本書は、初心者から精通者まで幅広く利用して頂ける書となったものと考えています。

 

 このような本書が、リース取引の税務に携わる賃貸人、賃借人、税理士、国税職員、研究者等の皆様方の日々の実務や研究等にわずかなりともお役に立つようであれば、幸いです。

 

 最後になりましたが、本書の出版に協力して頂いた法令出版の皆様方に厚く御礼を申し上げる次第です。


 平成24年10月         日本税制研究所 代表理事
                税理士 朝長英樹

はじめに

<座談会>
「リース税制」について語る ………………………………………… 2

 

第Ⅰ部 リース税制の考え方と仕組み

 第1章 法人税制の考え方と仕組み………………………………… 18
  第1節 私法におけるリース取引の考え方……………………… 18
   1.賃貸借取引とリース取引…………………………………… 18
   2.リース取引の区分…………………………………………… 20
   3.リース取引の仕組み………………………………………… 21
   4.リース取引の特徴…………………………………………… 23
   5.リース取引に関する学説及び判例………………………… 28
   6.私法におけるリース取引の考え方………………………… 34

  第2節 法人税制におけるリース税制の沿革…………………… 36
   1.昭和53年通達前……………………………………………… 36
   2.昭和53年通達………………………………………………… 45
   3.昭和63年通達………………………………………………… 56
   4.平成10年度改正……………………………………………… 63
   5.平成17年度改正……………………………………………… 73
   6.平成19年度改正……………………………………………… 76

  第3節 法人税制の考え方と仕組み……………………………… 83
   1.対象となるリース取引の範囲と区分……………………… 83
   2.売買とされるリース取引の取扱い………………………… 88
   3.金銭の貸借とされるリース取引の取扱い………………… 96
   4.法人税制の考え方と仕組み………………………………… 99

  第4節 法人税制の問題点………………………………………… 103
   1.法人税制の考え方の問題点………………………………… 103
   2.法人税制の仕組みの問題点………………………………… 107

 第2章 企業会計の考え方と仕組み………………………………… 122

  第1節 リース会計基準の沿革…………………………………… 122
   1.平成5年前…………………………………………………… 122
   2.平成5年(リース取引に係る会計基準)………………… 130
   3.平成19年(リース取引に関する会計基準)……………… 134

  第2節 企業会計の考え方と仕組み……………………………… 139
   1.対象となるリース取引の範囲と区分……………………… 139
   2.会計上のファイナンス・リース取引の取扱い…………… 142
   3.企業会計の考え方と仕組み………………………………… 155

  第3節 企業会計の考え方と仕組みを税制に導入する
     場合の問題点………………………………………………… 158
   1.企業会計の考え方を税制に導入する場合の問題点……… 158
   2.企業会計の仕組みを税制に導入する場合の問題点……… 159

 第3章 消費税制の考え方と仕組み………………………………… 164

  第1節 消費税制におけるリース税制の沿革…………………… 164
   1.昭和63年の消費税法の創設………………………………… 164
   2.平成10年度改正……………………………………………… 166
   3.平成19年度改正……………………………………………… 168

  第2節 消費税制の考え方と仕組み……………………………… 171
   1.対象となるリース取引の範囲と区分……………………… 171
   2.売買とされるリース取引の取扱い………………………… 171
   3.金銭の貸借とされるリース取引の取扱い………………… 181
   4.消費税制の考え方と仕組み………………………………… 184

  第3節 消費税制の問題点………………………………………… 187
   1.消費税制の考え方の問題点………………………………… 187
   2.消費税制の仕組みの問題点………………………………… 190

 

第Ⅱ部 リース税制に関する法令の解釈と検討

 第1章 リース税制に関する法令の構造…………………………… 198
  第1節 リース税制に関する法令………………………………… 198

  第2節 リース取引に関する法人税法の構造…………………… 200
   1.リース取引に関する法人税法の構造……………………… 201
   2.法人税法とリース取引に関する会計基準等の関係……… 208
   3.法人税法とリース取引に関する通達の関係……………… 208

  第3節 リース取引に関する消費税法の構造…………………… 209

 

 第2章 対象となるリース取引の範囲と区分……………………… 212
  第1節 税法上のリース取引……………………………………… 212
   1.税法上のリース取引の定義………………………………… 212
   2.中途解約不能要件とフルペイアウト要件………………… 213
   3.税法上のリース取引から除外される取引………………… 220

  第2節 税法上のリース取引の区分……………………………… 223
   1.売買とされるリース取引と金銭の貸借とされる
    リース取引……………………………………………………… 223
   2.所有権移転外リース取引と所有権移転リース取引……… 224

 第3章 賃貸人の取扱い……………………………………………… 236
  第1節 賃貸人の取扱いの概要…………………………………… 236

 

  第2節 売買とされるリース取引の取扱い……………………… 238
   1.リース期間開始時及びリース期間中における取扱い…… 238
   2.リース期間終了時における取扱い………………………… 259

 

  第3節 金銭の貸借とされるリース取引の取扱い……………… 268
   1.リース期間開始時及びリース期間中における取扱い…… 268
   2.リース期間終了時における取扱い………………………… 270

 第4章 賃借人の取扱い……………………………………………… 272
  第1節 賃借人の取扱いの概要…………………………………… 272

 

  第2節 売買とされるリース取引の取扱い……………………… 274
   1.リース期間開始時及びリース期間中における取扱い…… 274
   2.リー間終了時における取扱い………………………… 289

  第3節 金銭の貸借とされるリース取引の取扱い ……………… 299
   1.リース期間開始時及びリース期間中における取扱い…… 299
   2.リース期間終了時における取扱い………………………… 302

 第5章 会計と税法の取扱いが相違している場合の取扱い……… 303

  第1節 会計と税法の取扱いが相違している場合の取扱いの
     概要…………………………………………………………… 303

  第2節 会計において賃貸借処理をした場合の税法の取扱い… 304
   1.賃貸人の取扱い……………………………………………… 304
   2.賃借人の取扱い……………………………………………… 311

  第3節 会計において売買・金融処理をした場合の税法の
     取扱い………………………………………………………… 324
   1.賃貸人の取扱い……………………………………………… 324
   2.賃借人の取扱い……………………………………………… 326

第Ⅲ部 Q&A

 1.対象となるリース取引の範囲と区分等 ……………………… 330
   《質問1》税法上のリース取引………………………………… 330
   《質問2》「売買」とされるリース取引……………………… 331
   《質問3》「金銭の貸借」とされるリース取引……………… 333
   《質問4》所有権移転外リース取引と所有権移転リース取引 335
   《質問5》法人税法22条4項の規定とリース取引に関する
        会計基準等の関係…………………………………… 341
   《質問6》法人税と企業会計におけるフルペイアウトの
        形式的要件の相違…………………………………… 344
   《質問7》残価保証額及び割安購入選択権の行使価額と
        フルペイアウトの形式的要件……………………… 347
   《質問8》フルペイアウトの形式的要件における借入金
        利子等の取扱い……………………………………… 350
   《質問9》税法上のリース取引から除かれる「土地の賃貸借」 353
   《質問10》所有権が移転しない土地の賃貸借の取扱い……… 355
   《質問11》税法上のリース取引に係る消費税の取扱い……… 357
   《質問12》「リース資産」の定義……………………………… 359
   《質問13》リース取引に係る資産の固定資産税……………… 361
   《質問14》転リース……………………………………………… 362

 2.リース取引の取扱い …………………………………………… 366
   《質問15》リース資産の「引渡しの時」と「リース取引
       開始日」の関係 ……………………………………… 366
   《質問16》延払基準の方法と会計基準の収益の計上方法の
        不一致⑴……………………………………………… 367
   《質問17》延払基準の方法と会計基準の収益の計上方法の
       不一致⑵………………………………………………… 370
   《質問18》残価保証額、割安購入選択権の行使価額及び
       見積残存価額の取扱い………………………………… 372
   《質問19》法人税法63条1項と2項の規定の関係…………… 375
   《質問20》法人税法63条7項の規定と別表14⑹の関係……… 377
   《質問21》特例的計上基準(20%利息法)による方法により
       計算される利子保険部分の消費税法上の取扱い…… 381
   《質問22》利子保険部分が契約に明示されている場合に
        法人税法上の特例的計上基準(20%利息法)を
        適用したときの消費税の計算……………………… 383
   《質問23》貸倒引当金の設定対象となるリース債権………… 388
   《質問24》法人税と企業会計におけるリース資産の取得
        価額の相違…………………………………………… 389
   《質問25》残価保証額の定めがある場合のリース資産の
        取得価額 …………………………………………… 390
   《質問26》リース取引に係る資産の減価償却方法…………… 395
   《質問27》法人税と企業会計における償却方法の相違……… 396
   《質問28》事業の用に供していないリース取得資産に
        係るリース期間定額法の適用……………………… 399
   《質問29》リース資産に係るグルーピングの適用の有無…… 402
   《質問30》リース資産に係る資本的支出……………………… 403
   《質問31》建物と土地を一体としたリース取引の消費税
        法上の取扱い………………………………………… 404
   《質問32》土地と建物等を一括リースした場合の判定……… 412
   《質問33》中小企業者等が機械等を取得した場合の特別
        償却と税額控除……………………………………… 414

   《質問34》企業会計上賃貸借処理された税法上のリース取引 416
   《質問35》不均等リース料……………………………………… 418
   《質問36》免税事業者から課税事業者へ移行する場合に
        おける賃貸人と賃借人の処理の不一致…………… 420
   《質問37》リース投資資産の帳簿価額の減額金額とリース
        資産の償却限度額の不一致………………………… 423
   《質問38》リース投資資産の帳簿価額の減額可能額とリース
        資産の償却可能額の不一致………………………… 425
   《質問39》税制で賃貸借処理を行う場合の企業会計上の
        減価償却費の取扱い………………………………… 426
   《質問40》組織再編成税制とリース取引……………………… 428
   《質問41》民法の改正とファイナンス・リース契約 ………… 429


第Ⅳ部 あるべきリース税制の考え方と仕組み

 第1章 あるべき法人税制の考え方と仕組み……………………… 432
  第1節 あるべき法人税制の考え方……………………………… 432
   1.賃貸人を中心とした制度…………………………………… 432
   2.売買と金融という二つの経済的実態を反映した制度…… 433

 

  第2節 あるべき法人税制の仕組み …………………………… 436
   1.対象となるリース取引の範囲と区分……………………… 436
   2.あるべき法人税制の取扱い………………………………… 444

 

  第3節 あるべき法人税制の考え方と仕組み ………………… 454

 

 第2章 あるべき消費税制の考え方と仕組み……………………… 468
  第1節 あるべき法人税制に対応する消費税制の考え方と
     問題点………………………………………………………… 468
   1.あるべき法人税制に対応する消費税制の考え方………… 468
   2.あるべき法人税制に対応する消費税制の仕組み………… 469
   3.あるべき法人税制に対応する消費税制の問題点………… 470

 

  第2節 あるべき消費税制の考え方と仕組み…………………… 472
   1.あるべき消費税制の考え方………………………………… 472
   2.あるべき消費税制の仕組み………………………………… 475
   3.あるべき消費税制の考え方と仕組み……………………… 477

 

【18ページ ~ 19ページ 抜粋】

 

第I部 リース税制の考え方と仕組み

第1章 法人税制の考え方と仕組み

第1節 私法におけるリース取引の考え方

 

 一般に、企業の経済活動は民法や商法などに則って行われていることから、リース税制を語る場合にも、これらの私法においてリース取引がどのように位置付けられているのかということを知っておくことは、非常に有益です。特に、私法におけるリース取引の考え方を知っておくことは不可欠である、と言えましょう。

 

 このため、リース税制の検討を行う前に、本節では、私法におけるリース取引の考え方について確認することとします。

 

1.賃貸借取引とリース取引

 我が国においては、リース契約やリース取引に関する特別な法律1はなく、また、民法又は商法においてもこれらに関する明文の規定はありません。

 しかしながら、「リース(lease)」とは、もともと英語で「賃貸借、賃貸借契約」を意味していた用語であり、「リース」が「賃貸借」という内容を有することを踏まえてその契約を民法上の典型契約(有名契約)2 とみた場合には、その契約は民法601 条(賃貸借)の「賃貸借契約(当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約する契約)」に含まれることとなるものと考えられます。

 実際、リース物件の民法上の所有権(以下、「法的所有権」といいます。)は、リース期間中も、リース物件を使用する賃借人(ユーザー)ではなく、賃貸人(リース会社等)が有しており、賃借人は、リース物件の使用の対価として賃貸人にリース料(賃借料)を支払います。また、リース契約書においては、「賃貸人」、「賃借人」など、賃貸借契約で用いられる語と同様の語が用いられています。

 ただし、1950 年代に米国で機械設備・事務機器などの動産の調達手段として「ファイナンス・リース取引」が登場し、その後、我が国に導入された際3 に、これを通常の賃貸借取引と区別して「リース取引」と呼んできた経緯があることから、我が国では、「リース取引」を「ファイナンス・リース取引」の意味で狭義に用いることが多くなっているように思われます。

 このように、「リース取引」は、その表す意味が異なる場合があるわけで.....

 


 

※脚注1

 「リース契約」という用語が法令上に初めて登場したのは、昭和48年4月に改正された「機械類信用保険法」と言われていますが、そこでは、リース契約について法的な定義が行われているわけではなく、「制度の対象となるリースの範囲」が設定されているのみでした(リース事業協会法務委員会「リース標準契約書の解説(Ⅰ)」月刊リース、平成10年2月、13頁)。その後も、他の法令にリース(契約)という語は登場しますが、現在も私法上のリース契約の位置付けを明確にしたものは存在しません。


 なお、機械類信用保険法2条(定義)の3項では、「リース契約」を次のように規定していました。

 

「 この法律において「リース契約」とは、機械類を使用させ、又はプログラムを計数型電子計算機による情報処理のために使用させる契約であつて次の各号に適合するものをいう。

 一  機械類を使用させ、又はプログラムを計数型電子計算機による情報処理のために使用させる期間(以下「使用期間」という。)が三年以上において政令で定める期間を超えるものであり、かつ、使用期間の開始の日(以下「使用開始日」という。)以後又は使用開始日から一定期間を経過した後当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないものであること。

 二  対価を政令で定める回数以上に分割して受領することを条件とするものであることその他対価に関する契約の内容が政令で定める要件に適合するものであること。

 三  使用期間が満了した後、機械類の所有権が相手方に移転し、又はプログラムのプログラム使用権を相手方が取得する旨の定めがないものであること。 」

 

※脚注2

 「典型契約(有名契約)」とは、民法に規定されている「贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解」の13種類の契約をいい、これらに該当しないものを「非典型契約(無名契約)」といいます。

 

※脚注3

 リース取引は、もともと不動産を中心として行われていましたが、米国では1952年(昭和27年)にリース専業会社であるユナイテッド・ステイツ・リーシング社等が設立され、現在のような動産を中心とした「ファイナンス・リース取引」が行われるようになりました。そして、我が国では昭和38年に最初のリース専業会社である株式会社日本リース・インターナショナル(現在の日本GE株式会社)が、昭和39年にはオリエント・リース株式会社(現在のオリックス株式会社)や東京リース株式会社(現在の東京センチュリーリース株式会社)が設立され、ファイナンス・リース取引が行われるようになりました。

【330ページ ~ 331ページ 抜粋】

 

1.対象となるリース取引の範囲と区分等

 

《質問1》税法上のリース取引

 税法上で「リース取引」とされるものの要件を教えてください。

 また、税法上のリース取引の取扱いは、どのようになるのでしょうか。

 

《回答》

 法人税法においては、資産の賃貸借(一定の土地の賃貸借等を除きます。)のうち、①中途解約不能要件と②フルペイアウト要件に該当するものをリース取引(以下、「リース取引」といいます。)と定義しています。

 

 この税法上のリース取引とされたものについては、その取引の内容に応じて「売買」又は「金銭の貸借」として取り扱われます。

 

〔解説〕

1 税法上のリース取引の要件

 税法上のリース取引の要件である次の2つは、通常の賃貸借取引とは異なる経済的実態にあるファイナンス・リース取引と、それ以外のリース取引(オペレーティング・リース取引)を区分する最も基本的な要件と考えられています。すなわち、税法上のリース取引は、企業会計上のファイナンス・リース取引と概ね一致していると考えてもよいわけです。

 

① 中途解約不能要件(法法64 の2③一)

賃貸借契約が賃貸借期間の中途において解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること

 

② フルペイアウト要件(法法64 の2③二)

 賃貸借に係る賃借人が、その賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、その資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること

 

 なお、上記①の「これに準ずるもの」については、法人税基本通達12 の5-1-1(解除することができないものに準ずるものの意義)で、具体的に例示されています。詳しくは、「第Ⅱ部第2章第1節2」をご覧ください。

 

 さらに、上記②のフルペイアウト要件については、形式的要件も設けられています。詳しくは、「第Ⅱ部第2章第1節2⑵」をご覧ください。

 

2 税法上のリース取引の取扱い

 ファイナンス・リース取引の経済的実態は「売買」と「金融」であり、ファイナンス・リース取引については法的形式と経済的実態が乖離していることから、税制において、法的形式に従った通常の賃貸借取引と同様の取扱いを行った場合には、取引実態を反映しない課税がなされる可能性があります。

 

 このため、上記1により税法上のリース取引とされたものについては、その内容に応じて「売買」又は「金銭の貸借」があったものとして取り扱うこととされています(法法64 の2①・②)。

 

 これらの取扱いの詳細に関しては、後掲《質問2》及び《質問3》をご参照ください。

 

《質問2》「売買」とされるリース取引

 税法上のリース取引のうち、「売買」とされる取引とは、どのようなものですか。また、その取扱いを教えてください。

 

《回答》

 法人税法においては、リース取引は、「金銭の貸借」とされるものを除き、リース資産の「売買」とされることになります。

 

 「売買」とされるリース取引については、原則として、リース資産の引渡しの時に売買があったものとして取り扱われます

【432ページ ~ 433ページ 抜粋】

 

第1章 あるべき法人税制の考え方と仕組み

第1節 あるべき法人税制の考え方

 

 第Ⅰ部及び第Ⅱ部においては、現行のリース税制の考え方と仕組みについて解説と検討を行いましたが、各所で触れたとおり、現行のリース税制には、その考え方と仕組みの双方に課題があることも事実です。

 

 このため、本節においては、まず、リース取引に関するあるべき法人税制の考え方はどのようなものとするべきかということについて述べることとします。

 

1.賃貸人を中心とした制度

 リース取引に関するあるべき法人税制を考えるに当たっては、リース取引の実態を的確に捉えて実態に即した課税を行う、ということが最も重要となります。法的形式と経済的実態がいずれも賃貸借で一致しているリース取引であれば、通常の賃貸借取引と同様に取り扱うことで足るわけですが、法的形式と経済的実態が乖離しているリース取引については、その経済的実態を詳細に検討し、その経済的実態に即した課税を行うのが適当であると考えます。

 

 ところで、従来の我が国のリース税制がどのようなものであったのかという点に目を向けて見ると、第Ⅰ部の「第1章 法人税制の考え方と仕組み」の「第2節 法人税制におけるリース税制の沿革」で述べたとおり、我が国のリース税制は、賃借人における課税上の弊害を防止するという観点に立って作られてきたという歴史があり、リース取引の経済的実態を反映させるという観点に立って立案したとされる平成19 年度改正も、同改正前と同様に、専ら賃借人の課税関係をどのようにするべきかという観点に立って作られていると考えられます。

 

 しかしながら、その実態に即してリース取引に課税を行うといった場合に、その課税の対象とするべきものが何かということを改めて考えてみると、それは、まず、そのリース取引から賃貸人に生ずるリース料収入となるはずです。

 

 確かに、賃借人がリース取引を利用して自らの所得を圧縮しようとすることがあり、それへの対応は重要となりますが、リース取引の経済的実態を的確に反映させてリース税制を作るということになれば、その中心に据えるべきは、やはり、賃貸人に生ずるリース料収入であると考えます。

 

 まず、賃貸人に生ずるリース料収入に対してどのように課税を行うのが最も適切であるのかということを良く考えて基幹制度を創り、次に、賃貸人と賃借人に問題が生ずることがないようにするためにはどのように取り扱えばよいのかということを考えて必要な措置を付加する、というのが本来の立案のあり方ではないかと考えます。
 本章においては、このような観点に立って論を進めることとしています。

 

2.売買と金融という二つの経済的実態を反映した制度

 リース取引は、既に述べてきたように、民法601 条(賃貸借)の「賃貸借」に基づく取引であると考えられますが、リース取引の中には、通常の賃貸借取引とは異なり、賃借人の注文に合わせた特別仕様の物件を対象とするため賃貸人が物件の瑕疵担保責任や保守修繕義務を負わないこととされていたり、その契約の中途解約が不能とされていたりするものがあります。

 

 このようなリース取引が一般に「ファイナンス・リース取引」と呼ばれているわけですが、このファイナンス・リース取引は、上記のような特徴を有することから、その対価として賃貸人が受け取るリース料は、その経済的実態からすれば、「リース資産の使用の対価」ではなく、「リース資産の購入代価(元本相当額)と利息相当額の合計額の回収額」となっています。

 

 一方、現行の法人税制においては、賃貸人が受け取るリース料の性質は、売買とされるリース取引については、「資産の譲渡の対価」とされ、金銭の貸借とされるリース取引については、「金銭の貸付けによる元本相当額と利息相当額の合計額の回収額」とされています。このため、現行の法人税制においては、賃貸人が受け取るリース料の性質がファイナンス・リース取引の経済的実態に即しているとは言い難いものとなっていると考えられます。