書物・出版物

どこがどうなる!?平成27年度
 税制改正の要点解説

朝長 英樹【監修】
阿部 泰久 小畑 良晴 塩野入文雄 竹内 陽一 掛川 雅仁
【編著】
幕内 浩  服部 智之 神谷 智彦 浅野 洋  妹尾 明宏
有田 賢臣 飯田聡一郎 大塚 直子 神谷 紀子 小林磨寿美
佐々木克典 鈴木 達也 武地 義治 内藤 忠大 中尾 健 
藤村浩一郎 新沼 潮  長谷川敏也 藤野 智子 棟田 裕幸
【共著】
朝長明日香【執筆協力】

A5判・単行本・214ページ

清文社(2015/3/27)

定価1,000円(税別)

 

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は し が き

 

  平成27年度税制改正は、昨年度の税制改正に引き続き、我が国の現在の最重要課題がデフレからの脱却と経済再生であるという認識の下で、これらをより一層確実なものとするという観点に立って行われています。成長志向に重点を置いた法人税改革、高齢者層から若年層への資産の早期移転を通じた住宅市場の活性化等のための措置、地方創生のための企業の地方拠点強化のための措置、結婚・子育て支援等のための措置、消費税率の引上げが遅れることに伴う財源措置、国境を越えた取引等に係る課税の国際的調和に向けた措置などが主なものとなっています。

 

  法人税改革の内容としては、まず、法人実効税率の引下げに注目する必要があります。法人税率は、25.5%から23.9%に引き下げられます。そして、法人事業税所得割(標準税率)が7.2%から平成27年度が6.0%に引き下げられ更に平成28年度が4.8%に引き下げられます。この結果、国・地方の法人実効税率が34.62%から平成27年度が32.11%(▲2.51%)となり更に平成28年度が31.33%(▲3.29%)に下がることになります。

 

  これは、法人にとっては歓迎するべきことですが、一方で、大法人の欠損金の繰越控除限度が引き下げられ、受取配当益金不算入制度における益金不算入割合が引き下げられ、また、法人事業税の外形標準課税が拡大されることになります。

 

  これらの改正により、大法人で赤字であったり繰越欠損金が残っていたりする法人や受取配当の多い法人の中には、増税となるものも少なくないと思われます。

 

  消費税に関しては、周知のとおり、税率10%への引上げの時期が平成27年10月1日から平成29年4月1日に変更されます。

 

  また、従来から問題視されていた国境を越えて行う電子商取引が消費税の課税対象とされることになります。電子商取引は、国境の有無を問わず行い得るものであり、既にかなり以前から相当な規模で行われてきたものですから、遅すぎる改正となってしまった感が否めません。

 

  また、所得税におけるいわゆる出国税の創設にも注目しておく必要があります。この制度は、時価1億円以上の有価証券等を有するなどの一定の要件に該当する者が国外に転出する際に、その有価証券等の譲渡等をしたものとみなして課税をするものです。現実にこの出国税が課されるということになると、税額が巨額になることが有り得ますので、適用される可能性がある者は、十分に注意しておく必要があります。

 

  近年、我が国の富裕層の中には、国外に住居を構えるケースが増えているわけですが、この出国税の創設により、このような傾向に一定の歯止めがかかる可能性があります。

 

  さらに、納税環境整備の一環として改正が行われるマイナンバーが付された預貯金情報の管理を銀行等に義務付ける改正にも注目しておく必要があります。

 

  今後は、法人と個人の財産状況が一元的に把握される状態となることは、間違いありません。

 

  このような平成27年度税制改正は、従来の改正とはやや異なり、将来の我が国の税制の姿を示唆する重要な改正となっているように思われます。

 

  この平成27年度税制改正が我が国の経済の再生の契機となることを期待したいと考えます。

 

  なお、本書は、「平成27年度税制改正の大綱」(平成27年1月14日閣議決定)に基づき起稿し、改正法律案に示された改正規定を追記する等によって作成しています。

 

  本書が皆様方の日々の実務に少しでもお役に立つようであれば、幸いです。最後に、本書の刊行にご助力を賜わりました清文社の宇田川真一郎氏に編著者を代表して御礼を申し上げます。

 

                                                  編著者を代表して

                                                  日本税制研究所代表理事 朝長英樹

                                                                  税理士 竹内陽一

目 次

 

Ⅰ 法人税関係の改正

  1 法人税改革(法人税率の引下げ)・007

  2 欠損金の繰越控除制度等の見直し・011

  3 受取配当等益金不算入の見直し・017

  4 外形標準課税の拡大・020

  5 資本割の課税標準及び均等割の税率区分の見直し・022

  6 付加価値割における所得拡大促進税制の導入及び負担変動の軽減措

    置・025

  7 中小法人特例の存続・028

  8 貸倒引当金の法定繰入率に係る簡便法の基準年度の見直し・032

  9 特定の事業用資産の買換え特例の延長と一部改正・034

  10 地方創生①~地方拠点強化税制の創設・037

  11 地方創生②~雇用促進税制の拡充・039

  12 国家戦略特区機械等取得特別償却等・041

  13 福島再開発投資等準備金制度の創設・043

  14 繰延ヘッジ処理等有効性判定の届出・044

  15 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度(所

     得拡大促進税制)・047

  16 研究開発税制の強化・重点化・053

  17 環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)・058

  18 医療用機器等特別償却制度・060

  19 医療法人分割制度・062

 

Ⅱ 個人所得税関係の改正

  1 出国時課税制度の創設・066

  2 財産債務明細書の見直し・089

  3 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の整

    備・095

  4 ジュニアNISA の創設・102

  5 NISA の非課税枠の拡充・111

  6 特定口座の利便性の改正・113

  7 上場株式等と非上場株式等の譲渡損益の通算不可(平成28年施行)・114

  8 住宅ローン減税・115

  9 大深度地下法16条に基づく使用の認可を受けた事業に係る区分地上

    権等の設定対価に対する課税の見直し・121

  10 番号制度の目的と住民票の写しの添付省略・123

  11 番号制度の導入スケジュール・126

  12 番号制度導入に伴う具体的な税務実務・128

  13 国外居住親族扶養控除等添付書類の義務化・131

  14 生命保険等の一時金の支払調書と契約者変更記載・135

  15 確定拠出年金法の改正・137

  16 ふるさと納税の改正及びワンストップ特例・140

 

Ⅲ 資産税関係の改正

  1 住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置等の延長・拡充・144

  2 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設・152

  3 事業承継税制の見直し・161

  4 登録免許税の特例措置の延長及び廃止・166

  5 不動産取得税の課税標準及び税率の特例・168

  6 空家の除去等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所

    要の措置・169

  7 土地に係る固定資産税等の負担調整措置・170

  8 サービス付き高齢者賃貸住宅軽減(固定資産税・不動産取得税)・172

 

Ⅳ 消費税関係の改正

  1 消費税率の10%への引上げの時期・174

  2 外国人旅行者向け免税手続・181

  3 国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し・184

  4 国外事業者による芸能・スポーツ等の役務の提供に係る消費税の課

    税方式の見直し・190

 

Ⅴ 国際税制関係の改正

  1 外国子会社配当益金不算入制度の見直し・192

  2 外国子会社合算税制の見直し・198

  3 帰属主義への円滑な変更の実施・202

 

Ⅵ 納税環境の整備

  1 マイナンバーが付された預貯金情報・205

  2 税務関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し・205

  3 e―Tax の利便性・208

  4 期限後申告と無申告加算税・210

  5 個人住民税における還付加算金起算日の見直し・212