【編著】 朝長 英樹
>【共著】 竹内 陽一 長谷川敏也 小林磨寿美 大塚 直子
> 飯田聡一郎 古里 貴洋 西山 卓 内藤 卓
>【執筆協力】森 祐司 朝長明日香
は し が き
近年、我が国においては、企業の経営環境が少しずつ改善されてきた感がありますが、しかし、期せずして、解散・清算という途を辿ることとなる企業も、決して少なくありません。
これまで、本書のシリーズにおいては、組織再編成に関して、会社合併実務必携』、『会社分割実務必携』、『株式交換・株式移転実務必携』を発刊させて頂いたところですが、上記のような事情に鑑みて、今回、新たに解散・清算に関する解説書として本書を発刊させて頂くこととしました。
本書の第1部においては、解散・清算の法務に関して記述しています。
解散・清算に当たっては、それらの法務を避けて通ることはできません。この第1部は、経験豊富な司法書士と税理士の方々に、実務を踏まえて記述して頂いていますので、特に、実務に携わる方々には、参考として頂けるものと考えています。
第2部においては、解散・清算の税務に関して記述しています。この第2部においては、解散・清算の税務に関して幅広く取扱いを記載するとともに、実務で問題となる事項に着目して記述しています。
解散・清算の税務に関しては、平成 22 年度税制改正において設けられた法令の規定の中に、文言どおりに実務に適用することが難 しいものが存在するなど、課題を残す状態となっていますので、実務においては、注意が必要となります。
この第2部においては、このような点に留意しつつ、経験豊富な税理士の方々に実務を踏まえて取扱いを解説して頂いています。
この解散・清算の分野の業務に関しては、他の分野とは異なり、税制上の取扱いが不明な部分が多い、という声も聞くところですが、この第2部においては、不明な部分に関する実務対応に関しても、可能な限り、踏み込んで記述して頂いておりますので、実務に携わる皆様方には、参考として頂けるものと考えています。
このような本書が、解散・清算の実務に携わる税理士・公認会計士・弁護士と企業の税務担当者の皆様方、これらに係る税制の勉強を志す皆様方、これらの税務に関して税務調査・審理事務を担当する国税職員の皆様方などの日々の実務や勉強等に僅かなりともお役に立つようであれば、幸いです。
最後になりましたが、本書の校正等にご尽力を賜わりました森裕司税理士、そして、本書の刊行にご助力を賜わりました法令出版の皆様方に、厚く御礼を申し上げます。
平成 28 年2月
著者を代表して
日本税制研究所 代表理事
税理士 朝長 英樹
目 次
第1部 解散・清算の法務
第1章 解散・通常清算……………… 2
第1節 株式会社の解散……… 2
第2節 株式会社の清算…………… 5
1 通常清算 (5)
2 特別清算 (5)
第3節 清算株式会社の機関……… 6
1 清算株式会社の機関 (6)
2 清算人の選任 (7)
3 清算株式会社の権利能力 (7)
第4節 清算事務………………… 9
1 会社財産の調査・報告 (9)
2 現務の結了 (11)
3 財産の換価 (11)
4 債務の弁済 (11)
第5節 清算事務年度の特例… 12
第6節 残余財産の分配……… 15
1 残余財産の分配 (15)
2 残余財産の分配が金銭以外の財産の場合 (16)
第7節 清算事務の終了……… 16
1 決算報告の作成と承認 (16)
2 清算の結了 (17)
3 帳簿資料の保存 (17)
第8節 清算結了登記………… 18
第9節 清算会社の継続……… 19
第2章 特別清算……………… 20
1 特別清算の概要 (20)
2 特別清算開始の申立て (21)
3 財産目録及び清算貸借対照表の作成並びに 株主総会の承認 (22)
4 債権者集会 (22)
5 協定の認可の申立てと決定 (23)
6 特別清算の終結 (23)
7 特別清算に関する登記 (24)
第3章 破産…………………… 25
1 破産手続開始の決定 (25)
2 事業年度 (25)
3 申告等 (26)
4 債権者の貸倒損失の処理 (27)
第2部 解散・清算の会計
第1章 解散から清算結了までの清算事務の概要…30
1 会社法で作成が求められる財産目録等の概要 (30)
2 企業会計基準の考え方 (31)
3 税法と会社法との相違と実務上の対応 (32)
第2章 解散時に作成する計算書類…………… 34
1 財産目録と貸借対照表の作成義務 (34)
2 財産目録の内容 (35)
3 貸借対照表の内容 (42)
第3章 各清算事務年度に作成する計算書類… 47
1 貸借対照表及び事務報告並びにこれらの 附属明細書の作成義務 (47)
2 清算開始時の貸借対照表と各清算事務年度の 貸借対照表との相違点 (51)
第4章 清算終了時に作成する計算書類……… 54
1 決算報告の作成義務 (54)
2 決算報告の内容と記載例 (54)
3 税務申告と決算報告との関係 (57)
4 帳簿資料の保存義務 (58)
第3部 解散・清算の税務
第1章 通常清算と特別清算の取扱い……… 62
第1節 清算の手続きと税務申告の概要……… 62
1 申告期限等 (62)
2 法人税率 (63)
第2節 みなし事業年度…………………… 64
1 通常清算の場合のみなし事業年度 (64)
2 特別清算の場合のみなし事業年度 (66)
第3節 解散事業年度の税務の概要……… 66
第4節 清算事業年度の税務の概要……… 70
1 所得金額等の計算 (70)
2 税額計算上の留意点 (72)
3 申告等 (72)
第5節 残余財産確定事業年度の税務の概要…72
1 残余財産とは何か (72)
2 残余財産の確定日 (73)
3 残余財産がある場合の確定申告 (73)
4 残余財産確定後の収益・費用と税務申告 (77)
第6節 役員退職金の取扱い………………… 84
1 清算人に支払う解散前の取締役としての 職務執行に対する退職金の取扱い (84)
2 清算人としての職務執行に対する退職金の取扱い (86)
第7節 子会社支援損………………………… 87
1 子会社支援と法人税の取扱い (87)
2 完全支配関係がある他の内国法人に対する 寄附金の取扱い (88)
第8節 事業譲渡……………………………… 113
1 第二会社設立による子会社支援 (113)
2 事業譲渡法人の税務 (114)
3 時価譲渡とされる個別資産の価額 (115)
4 譲渡対価が適正でない場合 (119)
第9節 従来の清算所得課税との違い…… 119
第2章 残余財産がないと見込まれる場合の取扱い…… 120
第1節 残余財産がないと見込まれる場合の 取扱いの概要… 120
1 清算課税の廃止と期限切れ欠損金の損金算入 (120)
2 残余財産がないと見込まれるかどうかの 判定の時期 (121)
3 残余財産がないと見込まれるとき」の意義 (121)
第2節 実態貸借対照表の作成義務………… 124
1 会社法上の貸借対照表の作成義務 (124)
2 法人税法上の貸借対照表の添付義務 (126)
3 残余財産がないと見込まれることを説明する書類 (127)
4 実態貸借対照表及び財務計画の作成上の留意点 (128)
第3節 残余財産がない場合の手続き……… 129
第4節 残余財産がない場合の残余財産の確定の日… 130
1 残余財産がない場合の残余財産の確定の日 (130)
2 法人税等の租税債務見合いの財産 (131)
第5節 残余財産がない場合の確定申告…… 131
第6節 無償減資と住民税均等割の削減……144
1 無償減資と法人住民税均等割 (144)
2 過去の無償減資 (145)
第3章 清算法人の株主の税務…………………147
第1節 法人が清算法人の株主である場合の取扱い… 147
1 完全支配関係がない場合 (147)
2 完全支配関係がある場合 (153)
3 連結納税制度を採用している場合 (158)
第2節 個人が清算法人の株主である場合の取扱い… 160
1 配当所得の計算 (160)
2 株式の譲渡損益の計算 (160)
第3節 第二次納税義務……………………………… 161
1 清算人の義務と株主の第二次納税義務 (161)
2 第二次納税義務の成立要件・義務を負う者・ 義務の範囲 (162)
3 第二次納税義務により納付した税額の所得 計算上の取扱い (163)
第4章 債権者の税務…………… 165
第1節 法人債権者の貸倒損失…165
1 金銭債権が切り捨てられた場合 (165)
2 金銭債権の全額が回収不能となった場合 (165)
3 一定期間取引停止後弁済がない場合等 (166)
第2節 法人債権者の貸倒引当金…… 166
1 適用対象法人 (166)
2 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金 (167)
第3節 個人債権者の貸倒損失・貸倒引当金 … 168
1 事業上の債権 (168)
2 事業上以外の債権 (169)
第4節 債権者の税務(通常清算の場合)………… 170
1 貸倒損失 (170)
2 子会社支援等 (170)
3 グループ法人税制との関係 (171)
第5節 債権者の税務(特別清算の場合)………… 172
1 貸倒引当金 (172)
2 貸倒損失 (172)
第5章 清算法人の消費税………… 173
第1節 清算法人の消費税の申告……173
1 解散後の消費税 (173)
2 課税期間 (173)
3 解散における消費税に関する実務上の注意点 (174)
第2節 現物分配と消費税……… 177
第3節 現物出資と消費税……… 178
第4節 事業譲渡と消費税……… 178
1 事業譲渡における課税資産等の概要 (178)
2 譲受法人の課税仕入の処理 (181)
3 譲受法人が免税事業者や簡易課税事業者の場合 (182)
第6章 清算法人の地方税…………183
第1節 清算法人の住民税……… 183
1 法人税割における控除対象還付法人税額の引継ぎ (183)
2 清算法人の法人住民税の均等割 (184)
3 清算法人の中間申告と確定申告 (188)
第2節 清算法人の事業税……… 189
1 清算法人の外形標準課税 (189)
2 清算法人の所得割 (190)
3 清算法人の付加価値割 (190)
4 清算法人の中間申告と確定申告 (191)
第7章 破産の場合の取扱い………192
第1節 破産手続開始の決定と事業年度… 192
1 破産手続開始の決定と終結 (192)
2 破産手続開始決定による解散後の事業年度 (195)
第2節 欠損金の繰戻し還付請求…… 196
1 欠損金の繰戻し還付請求 (196)
2 更正の請求 (197)
第3節 破産における残余財産の確定の日…198
1 破産の場合の「残余財産の確定の日」(198)
2 破産の場合の債務の取扱い (199)
3 破産又は特別清算が行われた場合の評価損 (200)
第4節 破産債権と租税債権… 202
1 破産債権の優先関係 (202)
2 租税債権 (203)
3 破産手続開始決定後の法人住民税均等割の納付義務 (204)
4 破産法人の中間申告 (207)
第5節 破産に係る源泉徴収義務… 207
1 破産管財人報酬の源泉徴収義務 (207)
2 破産手続開始決定前の給与・退職金に係る 源泉徴収義務 (209)
第6節 債権者における貸倒損失…… 211
1 債権者における貸倒損失の計上の時期 (211)
2 債権者における貸倒損失の損金算入時期が 争われた事例 (212)
第7節 法人債権者の貸倒引当金(個別評価貸倒引当金)… 213
第8節 仮装経理による過大納付法人税額の還付………… 213
第9節 破産財団からの放棄…… 214
1 破産財団からの放棄 (214)
2 税務上の取扱い (215)
第10節 破産と特別清算の関係……216
1 破産と特別清算の相違点 (216)
2 破産・特別清算における債務免除益 (217)
3 期限切れ欠損金の損金算入 (218)
第11節 法人税及び消費税の還付申告…… 218
1 法人税 (218)
2 消費税 (219)
第12節 破産法人の地方税…… 221
第13節 破産法人の消費税…… 222
1 破産後の消費税 (222)
2 課税期間 (223)
3 破産財団の納税義務の判定 (223)
4 破産における消費税に関する実務上の注意点 (224)
第8章 完全支配関係がある場合の取扱い…228
第1節 完全支配関係……228
1 完全支配関係の定義 (228)
2 完全支配関係にある法人に適用される グループ法人税制の取扱い (237)
第2節 完全支配関係子法人が解散した場合の取扱い… 239
1 残余財産の確定と欠損金の引継ぎ (239)
2 子会社株式消滅損と欠損金の引継ぎ (239)
3 適格現物分配 (240)
第3節 受贈益・寄附金の益金・損金不算入… 242
1 完全支配関係がある場合の受贈益及び寄附金 (242)
2 解散・清算の論点 (244)
3 法人による完全支配関係がない場合の 債務免除の取扱い (244)
4 法人による完全支配関係がある場合の 債務免除の取扱い (245)
5 未処理欠損金額との関係 (245)
第4節 完全支配関係子法人の株式に係る 譲渡損益の損金・益金不算入…248
1 100%グループ内法人が保有する株式の 発行法人に対する譲渡 (248)
2 対象となる事由 (248)
3 解散又は清算の場合の譲渡原価相当額 (249)
4 資本金等の額の増減額 (250)
5 株式の譲渡損益の計上時期 253
第5節 完全支配関係子法人の株式に係る評価損の 損金不算入…253
1 有価証券の評価損の損金算入 (253)
2 完全支配関係子法人の株式の評価損の損金不算入 (254)
3 完全支配関係子法人の解散等が見込まれる場合に 評価損の損金算入が認められない
理由 (254)
第6節 残余財産確定の日の清算法人の譲渡損益調整勘定… 256
1 完全支配関係親法人による完全支配関係子法人の 資産の買取り (256)
2 残余財産確定事業年度における譲渡損益の実現 (257)
第9章 欠損金の繰戻し還付等… 258
第1節 欠損金の繰戻しによる法人税額の還付… 258
1 欠損金の繰戻しによる還付制度 (258)
2 解散等の場合の特例 (259)
第2節 欠損金の繰戻し還付の手続……… 261
第3節 仮装経理と法人税額の還付……… 263
1 仮装経理による過大納付法人税額の還付 (263)
2 仮装経理に基づく過大申告があった場合の「修正の経理」(264)
第 10 章 期限切れ欠損金の損金算入 …267
第1節 期限切れ欠損金の損金算入……267
1 期限切れ欠損金と青色欠損金の控除順序 (267)
2 手続規定 (269)
第2節 期限切れ欠損金額の算定方法……269
1 法人税法上の欠損金額 (269)
2 法人税基本通達における欠損金額 (270)
3 期限切れ欠損金額 (271)
4 実在性のない資産がある場合の期限切れ欠損金額 (272)
第3節 資本金等の額がマイナスの場合の取扱い… 273
1 適用年度終了の時における資本金等の額が マイナスの場合の取扱い (273)
2 資本金等の額がマイナスの場合の前事業年度 以前の事業年度から繰り越された欠損金額の計算 (274)
第4節 大法人における青色欠損金の控除限度額等……… 275
1 大法人における青色欠損金の控除限度額の縮減等 (275)
2 青色欠損金の控除限度額の縮減の影響による 調整計算 (277)
3 青色欠損金の繰越期間の延長 (287)
第 11 章 残余財産の確定による青色欠損金の引継ぎ … 288
第1節 完全支配関係子法人の残余財産が確定した 場合の欠損金の引継ぎ… 288
1 概要 (288)
2 完全支配関係がある他の内国法人 (289)
第2節 未処理欠損金額の算定…289
1 未処理欠損金額 (289)
2 未処理欠損金額の帰属事業年度 (291)
3 株主等が複数の場合 (294)
4 特別な場合の欠損金額の引継ぎ (295)
第3節 未処理欠損金額の引継制限…… 295
1 支配関係が5年以内の場合の未処理欠損金額の 引継制限の原則 (295)
2 支配関係が5年以内の場合の未処理欠損金の 引継制限の特例 (299)
第4節 欠損金引継ぎに関する適格合併と 解散の場合の取扱いの比較… 301
1 未処理欠損金額の帰属事業年度 (301)
2 適格合併と完全支配関係子法人の残余財産確定の 場合の欠損金の引継ぎ要件の相違
(302)
3 適格現物分配の場合の特例 (302)
第 12 章 適格現物分配 …… 303
第1節 完全支配関係子法人による適格現物分配… 303
1 適格現物分配による資産の帳簿価額による譲渡 (303)
2 資本金等の額・利益積立金額の減少額 (303)
第2節 適格現物分配による残余財産の分配に係る 親法人の税務…… 305
1 概要 (305)
2 現物分配資産の受入価額 (306)
3 株式の譲渡原価の額 (306)
4 株式の譲渡損益の不計上と資本金等の額の 減少・増加 (307)
5 みなし配当金額 (308)
6 適格現物分配に係る収益の額の益金不算入 (308)
7 認識時点 (309)
8 減価償却資産等の特例 (309)
第3節 残余財産の分配として金銭と現物が同時に 分配された場合… 312
第4節 適格現物分配と株主法人の欠損金の使用制限… 316
1 株主法人の欠損金の使用制限の概要 (316)
2 株主法人の含み損益と使用制限の範囲 (317)
3 移転資産の含み益と使用制限の範囲 (318)
4 適格合併の場合と適格現物分配の場合の 合併法人等の欠損金使用制限の比較 (319)
第5節 特定資産譲渡等損失額の損金不算入…320
1 適用期間内の譲渡に係る特定資産譲渡等損失額 (320)
2 特定資産譲渡等損失額と5年超の支配関係 (321)
3 適格現物分配の場合における株主法人の 特定保有資産に係る特定資産譲渡等損失額の
損金不算入額に係る特例計算 (322)
第6節 残余財産の一部分配としての適格現物分配と 適格分割型分割…… 324
第7節 残余財産の全部分配としての適格現物分配と 適格合併………… 324