税法解釈・提案

2006(平成18)年8月から2007(平成19)年3月までの活動-旧日本租税総合研究所-

 当研究所は、平成19年3月6日に有限責任中間法人として設立し、旧日本租税総合研究所の法人税法等基本問題委員会における研究活動を実質的に引き継ぐ形で、研究活動を開始しました。

「新たな事業体税制(法人税関係)」(新規)

≪問題意識≫

 法人税制が会社法・企業会計とともに経済活動のインフラであり、ストラクチャーのゆがみを是正することが我が国経済の力強さを取り戻すために不可欠であることと、法人税制には、解決された課題よりも、残された抜本的な見直しが必要な課題の方がはるかに多いということを確認した上で、この残された課題のうち、組織再編成税制・連結納税制度とともに、事業形態の多様化に対応する課題として位置付けられるのが事業体税制であると考えます。

 

 すなわち、企業が合同会社等の持分会社、信託、任意組合・匿名組合などの多様な事業形態を選択することができるように法人税制の抜本的な整備を図ること、非営利法人が社会貢献活動を大きく拡大するための十分な経済基盤を確保することができるように法人税制を抜本的に改めることは喫緊の課題です。

≪事業体税制の基本的な考え方≫

・ 実態に即した制度とする。

・ 各種事業体を通じて整合性のある制度とする。

・ 営利事業に課税し、非営利事業には課税しない。

・ 利益の帰属者を納税義務者とする。

・ 租税回避防止制度を整備する。

≪新しい信託税制≫

 信託とは、委託者が信託行為(例えば、信託契約、遺言)によって受託者に対して、金銭や土地などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理・処分などをする制度ですが、任意組合・匿名組合といった同種の事業体との整合性の確保、所得課税である法人税の本来の在り方といった観点から、信託の位置付け、納税義務者、利益・損失の計算等、新信託税制案の検討を行いました。

 

 併せて、「事業信託」、「特定信託」、「特定外国信託」、「遺言信託」、「公益信託」、「加入者保護信託」、「社内預金引当信託」及び「退職給付信託・年金信託」といった特殊な信託の取扱いについて検討を行いました。


 以上の検討内容は、こちらをご覧下さい税経通信07年1月号、117~131頁)。

≪非営利事業体に対する非課税制度等≫

 公益法人制度の抜本的な改革が行われ、公益法人制度改革三法(「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の整備等に関する法律」)が第164回通常国会で成立しました。

 

 この公益法人制度改革においては、当然のことながら、税制のあり方も大きな関心事項となっていましたが、税制に関しては、結論が先送りされ、政府税制調査会において「新たな非営利法人制度に関する課税及び寄附金税制についての基本的な考え方」(以下「税調案」という。)が平成17年6月に示されていました。

 

 この税調案は、非営利法人に対する寄附金課税を甘くしつつ、現行の収益事業課税を更に進めて法人税課税を厳しく行うという色合いの強いものであり、また、収益事業課税制度の問題点を根本から問い直すものとはなっていないために、法人税の理論からしても、世界の常識からしても、疑義があるものとなっている、さらに、民間による社会貢献活動の重要性よりも課税当局にとっての安全性を重視したために、民間による社会貢献活動を相当に制約するものとなっている、と考えています。

 

 そこで、現行の税制度を前提として対応策を考えるという観点ではなく、公益法人制度においてかつてない大改革が行われたことを受けて、税制度においても、そのあり方を根本から見直すという観点に立って、検討を行いました。

 

 以上の検討内容は、こちらをご覧下さい税経通信07年2月号、154~184頁)。

≪新しい組合税制≫

 任意組合・匿名組合に関しては、次の通達(法人税基本通達14―1―1(任意組合等の組合事業から生ずる利益等の帰属)、同14-1-1の2(任意組合等の組合事業から受ける利益等の帰属の時期)、同 14―1―2(任意組合等の組合事業から分配を受ける利益等の額の計算)、同14―1―3(匿名組合契約に係る損益))が法人税における税務執行上の取扱いの拠り所となっていますが、従来から、その取扱いを抜本的に見直して法制化するべきであるという指摘がなされてきました。

 

 平成17年度には、租税特別措置法に組合事業に係る損失がある場合の課税の特例(措法67条の12、67条の13、68条の105の2、68条の105の3)が設けられましたが、これも租税回避を防止するという観点からの部分的な対応に止まり、現行の組合の税務執行上の取扱いを抜本的に見直すものとはなっていません。

 

 現行の組合に関する税務執行上の取扱いについては、様々な問題点が指摘されていますが、我が国においても、組合に関する税制上の取扱いを整備して現行の取扱いの様々な問題点を解決し、法制化することが、避けて通ることのできない重要な課題となっていると考えられます。

 

 このような組合事業に係る税制の整備と法制化は、法的安定性の確保に繋がるとともに、事業形態の多様な選択を可能とすることによって我が国経済の一層の活性化にも資することとなると考えられます。


 以上の検討内容は、こちらをご覧下さい税経通信07年5月号、109~128頁)。

法人税法等の解釈研究(新規)

 租税実務においては、日々、行われていることですが、法人は、法人税法等の法令に基づき、法人税の額を計算して申告・納税を行い、国税局・税務署も、法人税法等の法令に基づき、調査を行って更正等を行うこととなります。この両者の間の争いを解決する裁判所も、法人税法等の法令に基づき、判決を下すこととなります。

 

 このように、これらの三者は、法人税法等の法令を解釈しなければならない立場に置かれているわけですが、現状を見ると、特に納税者において、法令解釈の重要性が十分には認識されていないように思われます。

 

 納税者は、法人税の申告、事業計画の策定、税務調査への対応、争訟等に当たり、法令をどのように解釈するのかということが問われることとなり、その解釈が適切か否かによって、納税額、事業計画の信頼性、追加納税額、争訟の勝敗等が変わることとなります。

 

  このように、法令をどのように解釈するのかということが非常に重要であるにもかかわらず、納税者が自ら法令を解釈しなければならない立場にあるという認識を十分に持っていないと思われる場合さえもあるというのが、現実です。

 

 この検討に当たっては、法令の文言に従って正しく解釈することを心がけるとともに、法令の解釈は最終的には司法当局が採る解釈に従うこととなることから司法当局の解釈がどのようなものとなるのかということを常に念頭に置きつつ解釈を行う必要があります。

 

 具体的には、組織再編成税制関係(無対価分割、無対価株式交換、親会社株式の継続保有の判定、「議決権のない株式」の範囲)、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度(法法35)における「常務に従事する役員」に関する解釈・研究を行いました。