※『詳解 グループ法人税制』(法令出版)に問3として掲載
グループ法人税制は、他の税制とは異なり、そもそもどのような制度となっているのかということがよく分かりませんので、ご教示をお願いします。
要 旨
グループ法人税制は、譲渡損益調整資産の譲渡損益調整を中心部に置いた寄木細工のような制度となっています。
「グループ法人税制は分かりにくい」という声を時々耳にしますので、そのような印象をお持ちの方は少なくないと思われます。
これについては、グループ法人税制のそもそもの性格によるところも大きいと思われます。
分かりやすい税制としてどのようなものがあるのかと質問をしてみたとすれば、寄附金税制、交際費税制、減価償却制度等が挙げられることになると思われますが、これらの税制(以下、便宜上、「寄附金税制等」という)と比較してみると、グループ法人税制の分かりにくさの理由が明確になってくるように思われます。
寄附金税制等とグループ法人税制との相違点は、基本的には、二つあると考えることができます。
一つ目は、対象法人に関する相違です。
寄附金税制等においては、誰がその制度の対象法人であるのかということについてほとんど問題とはならず、対象法人は自明であるといってよいでしょう。
これに対して、グループ法人税制においては、誰が対象法人となるのかという点からそもそも自明とはいえません。100%の資本関係にある法人が対象となるという基本線は分かったとしても、資本関係は複雑であり、また、対象法人に制限が付されている取扱いも少なくないため、実務においては、いずれの法人が対象となるのかという判断に迷うことも、少なくないはずです。
このグループ法人税制の対象法人の判定は、連結納税制度のそれよりも複雑となっており、これがグループ法人税制の分かりにくさの原因の一つであるわけですが、これは、グループ法人税制の入口の重要なチェック項目ともなるものですから、十分に注意する必要があります。
二つ目は、根拠規定に関する相違です。
寄附金税制等においては、それぞれの取扱いは、基本的には一つの法律の規定とその政省令の規定を根拠とするものとなっており、それらの規定の解釈がどのようになるのかということを考えれば、それで済むこととなるわけです。
これに対して、グループ法人税制においては、その取扱いの根拠規定が多岐にわたることとなっています。
グループ法人税制は、基本的には、グループを構成する法人の所得計算に関する特例ですから、連結納税制度と同じように特例を設けるということになれば連結納税制度において講じられている所得計算の特例と同じ数の特例規定が必要になるということになります。
現実には、グループ法人税制における所得計算の特例は、連結納税制度におけるそれよりも少なくなっていますので、連結納税制度のように広範に目配りをしなければならないというわけではありませんが、寄附金税制等と比べると、大きく事情が異なっており、これが分かりにくさの大きな原因の一つであることは、間違いありません。
ただし、取扱いの根拠規定が多岐にわたるとはいっても、それらがすべて並列に位置付けられるわけではありません。
現実に措置された取扱いや改正事項の解説から必ずしも明確に読み取れるわけではありませんが、「グループ法人税制」という制度を創設するということになると、必ず必要となる措置もあれば、必ずなければならないわけでもないという措置も出てくることとなります。
この「必ず必要となる措置」とはどのようなものかということになると、それは、必然的に、連結納税制度において必須とされているものに含まれているものということになってくるわけですが、まず、筆頭に挙げるべきは、グループ内で資産を移転した場合にその譲渡損益の計上を繰り延べる譲渡損益調整資産の譲渡損益調整(法法61の13)ということになります。この譲渡損益調整資産の譲渡損益調整が最もグループ法人税制らしい取扱いということになるでしょう。
このように考えると、グループ法人税制は、譲渡損益調整資産の譲渡損益調整を中心部に置いた寄木細工のような制度となっていると捉えることができることになります。
以上の2点が寄附金税制等と比べた場合の大きな相違点ということになるわけですが、グループ法人税制に関しては、広範に措置が講じられていますので、参考として、グループ法人税制として措置されている主な項目を図表に掲げます。